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2016.06.19

音楽ストリーミングのエイトトラックス、新ルール活用で資金調達へ 予備調査では4万人の支援者

Antonio Guillem / Shutterstock

音楽ストリーミングのスタートアップ、エイトトラックス(8tracks)は6月14日、クラウドファンディングのシードインベスト(SeedInvest)を通じて、一般投資家から最大1,100万ドル(約11.4億円)の資金を募るエクイティ型のキャンペーンを正式に開始したと発表した。1月にユーザーを対象に行った「予備調査」では、4万人の支援者が3,300万ドル(約34.2億円)を超える出資の意思を示していた。

創業およそ8年になるエイトトラックスは、未公開企業への投資に関して米証券取引委員会(SEC)が2015年に設けた新ルールを活用する、初の企業の1つだ。新規事業活性化法(JOBS法)の一環であるこの新ルールは、民間企業に対して最大5,000万ドル(約51.8億円)相当の証券の販売を認めるもので、5月16日に解禁された。従来、未公開企業への投資は適格投資家しか行うことができず、それには最低100万ドル(約1億円)の純資産または20万ドル(約2,073万円)の年収が必要だった。アメリカの人口のうち、この条件を満たすのはわずか3%と推定されている。

エイトトラックスにとって、これは理に適った変革だった。
「当社について、これまで以上に高い当事者意識を持つユーザーを生むことになる点が、大きな利点のひとつだ」と、同社の事業開発部門のトップ、トゥーヒン・ロイは言う。

同社は3月下旬にSECに申請を行い、5月下旬に承認の通知を受け取った。資金調達前の企業価値は2,800万ドル(約29億円)で、シリーズAキャンペーンでは最大1,100万ドルの優先株を販売する。個人投資家の最低投資額は100ドル(約10,360円)と、エイトトラックスのユーザーが主にミレニアル世代であることを踏まえて低めに設定されている。

JOBS法の新ルールがスタートアップに及ぼす影響は、企業の規模によって異なる。小規模な企業にとっては、出資に対するリターンとして(これまでの)Tシャツなどの小物以外のものを提供できるようになることで、クラウドファンディングでの資金調達の可能性が大幅に広がることになる。エイトトラックスのような、より確立された企業にとって、この新ルールは株式公開前に企業を成長させる上で必要な資金調達の道となる。

エイトトラックスでは、調達した資金をユーザー経験の拡大や、同業のパンドラ(Pandora)とアイ・ハート・ラジオ(iHeartRadio)にさらに対抗するために使う計画だ。これには、事業の海外展開や、資金不足で実現にこぎつけることができていない新たなモバイル機能の開発も含まれる。

6月14日に投資機会についてメールで通知を行った1,700万人の登録ユーザーに加えて、シードインベストとの提携により、同社は1万6,000人の適格投資家からの出資を得るチャンスもある。同じく音楽配信を行っていたLive365が閉鎖され、ソングザ(Songza)がグーグルに買収されるなど、中規模の同業者が廃業や買収の憂き目に遭っている今、市場シェアを伸ばすためには今回入ってくる資金がきわめて重要だとエイトトラックスは言う。

SECではクラウドンファンディングの投資家たちに対して、民間企業、それも特にスタートアップへの投資には危険も伴うと警告している。だがエイトトラックスに関しては、ベンチャー投資会社アンドリーセン・ホロウィッツや著名なDJのスティーブ・アオキ、アトランティック・レコードのクレイグ・カルマンCEOなどが投資家に名を連ねており、一般投資家も少し安心して投資に参加することができるだろう。

編集=森 美歩

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