ビジネス

2016.06.17

「全ての企業はメディア化する」 コンテンツマーケティングの大潮流 

weedezign / sutterstock

1950年代に確立したテレビ広告は、その後半世紀にわたり、企業が消費者に働きかけるための主要なメディアとなった。だが時代は移り変わり、今ではインターネットやソーシャルメディアに加えデジタルデバイスがテレビ広告の牙城を崩している。

消費者は見たいものや聴きたいものを選ぶことができるのが今の世の中だ。コンテンツマーケティングのPercolateが発表した2016年のトレンドに関する報告書は、「ハイパーコネクテッドな消費者の時代になり、企業はすべてのメディアにおいてシームレスな体験を利用者に提供するべきだ」と分析している。そのカスタマー・エクスペリエンスの中心となるのがコンテンツだ。

大量のメールやメッセージにより、消費者の注意は散漫になりがちだ。関心を得るためには魅力的なストーリーを提示できなければならない。この難題に答えを出そうとしているのがコンテンツマーケティングだ。マーケティング業界ではここ数十年で最大ともいえるシフトが起きている。企業は消費者の注意を引くために、情報を視覚的に表現するインフォグラフィックや、教育的動画、モバイル広告、記事の中に自然に溶け込ませるネイティブ広告なども試験的に取り入れている。コンテンツを作るには時間と有能な人材が必要で、資金力も要求される。

社内にコンテンツ編集部を置く企業が急増

コンテンツマーケティング企業NewsCredのCEO、シャフカトー・イスラム(Shafqat Islam)は「企業らはコンテンツはマーケティングの1ピースではなく、成長させるための原動力だと気づき始めている」と説明する。特にB2C企業にとってはそうかもしれない。ライターのマーケットプレイスScriptedのCEO、カーティス・クロ―カー(Curtis Kroeker)は「ヘルスケアや金融といった規制の多い業界では、公開前に厳しい評価と承認のプロセスが求められるため、参入が遅れている」と言う。

コンテンツに対する注目はここ5年で高まり、今ではコンテンツを作るチームを社内に設置して統括するブランド・エディターや編集長を置く企業も出てきた。企業の価値やミッションを伝えるためにジャーナリストを採用して、消費者を引き込むようなストーリーを描かせているのだ。パブリッシャーや従来のメディアだけでなく、コカ・コーラやIBMなどの大企業からスタートアップまで、パブリッシング専門チームを設けている企業は多い。

ニュース編集室のように、チーム内ではライティングスタイルやトーン(論調)、フォーマットを統一し、ウェブサイトやマガジンなどの媒体も管理する。コンテンツマーケティング企業Contentlyの編集長であるJoe Lazauskasは「本格的なコンテンツ専門チームを立ち上げる企業は5倍に増える」とみている。

インハウスのコンテンツ専門チームが立ち上がり、新たなコンテンツ専門スタートアップも出現するなか、メディアや広告代理店はどのような役割を果たせばよいのだろうか。広告代理店は企業との協業において数十年の経験があり、「質の高いコンテンツを作り出し、正しいターゲット層に届ける力がある」とイスラムは指摘する。従来型の広告は減るかもしれないが、「広告代理店の戦略的なガイダンスや実行能力の重要性はこれまで以上に高まっている」とクロ―カーも分析する。今のところブランド戦略の世界で職を失う人はいないようだ。

編集=上田裕資

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