ビジネス

2016.06.20

アジア化粧品市場を席捲! 韓国アモーレパシフィックの快進撃

アモーレパシフィックの徐慶培 / 写真=キム・ジェヒョン


これに対して徐は、製品ラインナップの多様化を打ち出し、ブランド力を強化。同時に中国市場に進出し、2002年に上海に新たな拠点を設けた。

「韓流ブームに気が付くと即座に対応しました。ドラマに当社の製品を登場させ、キャンペーンには人気の女優やモデルを起用。14年の大ヒットドラマ『星から来たあなた』では、主演のチョン・ジヒョンに当社の『IOPE(アイオペ)』の口紅をつけてもらった。この口紅は、ドラマがオンエアされると、アジア各国の店頭で品切れになりました」

現在、同社の海外市場での売り上げの半分以上を中国が占めるが、すでにシンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア等、14カ国に事業を拡大している。

市場拡大と同時に、商品開発にも力を入れる。近年の同社の主力商品のひとつが「クッションファンデ」。日焼け止め、化粧下地、保湿、ファンデーションなどの機能をひとつにまとめたマルチ機能を備え「テクノロジーコスメ」の代名詞となっている。韓国で累計1,500万個を出荷し、韓国女性の2.4人に1人が使用している。

「13年には上海の研究開発拠点で、中国市場に特化した商品開発も始めました。これらの商品は、もし韓流ブームが終わっても消費者をつなぎとめるでしょう」

“ナチュラル”を武器に欧米ブランドを追撃

徐はいま、アジアを超え、米国やヨーロッパの市場を見据えている。10年にはニューヨークの高級百貨店「バーグドルフ・グッドマン」でプレミアムラインの「雪花秀(ソルファス)」の販売を開始。14年には全米でチェーン展開する大手ディスカウントストア「ターゲット」で「LANEIGE(ラネージュ)」シリーズを発売した。

しかし、米国における同社の売り上げは、年間わずか3,300万ドル程度にとどまる。「現状では弊社の米国での顧客は、韓国系や中国系のアメリカ人に限られます。米国のマーケットは想像以上にタフで、まだまだ試行錯誤の段階です」と徐は話す。

韓流ブームが及ばない土地に、どう切り込むのか。「今、コスメ業界のキーワードは“ナチュラル”です。当社は創業以来、天然素材をベースにした商品をつくってきました。そうしたメッセージは、アメリカでも響くはずです」

アモーレパシフィックの挑戦はまだ始まったばかりだ。

文=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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