「2月のマイナス金利導入以降、住宅ローン市場で借り換えブームが起きています」
MFSの中山田明CEOは、ここ数カ月の住宅ローン市場の状況について、こう話す。ブームになるのは、低金利のローンに借り換えることで総返済額を減らせるケースがあるためだ。
同社は住宅ローンの借り換えを支援するスマホアプリ「モゲチェック」を提供。加えて、今年3月から対面で住宅ローンの借り換えの相談に乗る実店舗「モーゲージ・ネクスト」の出店を始めた。マイナス金利で住宅ローン市場が勢いづくいま、追い風に乗る。
中山田は米証券大手のベアー・スターンズ、新生銀行などで住宅ローンの証券化を手掛けた、いわば住宅ローンファイナンスのプロフェッショナルだ。住宅ローンの証券化に取り組む中で「住宅ローンは、もっと借り換えが起こるべきだ」と感じていたという。
だが、日本では構造的に借り換えにつながりにくい事情があった。
米国の金融機関の多くは、顧客に住宅ローンを貸し付けた後、それを政府関連機関等に売却する。金利ではなく、貸し付け時に受け取る融資手数料を主に収益源としているため、貸し付け後に金利が下がった場合には、自社の顧客に積極的にアプローチして借り換えを促す。
一方、日本の金融機関は、住宅ローンを貸付資産として保有し続ける。そのためたとえ金利が下がったとしても、自社の顧客に借り換えを勧めることはできない。
これが日本で住宅ローンの借り換えが進まない原因だ。
「そこを変えたいと考えました」
MFSは、2014年10月に商号変更を経て誕生。15年9月にマネックスベンチャーズ、電通国際情報サービス、電通デジタル・ホールディングスから総額9,000万円の出資を受けた。
スマホアプリの「モゲチェック」は、りそな銀行やソニー銀行など4行と契約。現在借りている住宅ローンの情報を入力すると、借り換えメリット額が大きい順にローン商品を提示する。ユーザーがアプリ経由で借り換えると、銀行からMFSに手数料が入るモデルだ。
だが、「モゲチェック」を実際に運用する中で、課題が見えてきた。
「住宅ローンは金利以外にも団体信用生命保険や審査基準など、様々な角度から比較する必要があります。また、借り換えたい商品が見つかっても、その後の手続きが煩雑。個別相談に乗ってほしいという要望が多くありました」
そこで今年3月、東京・京橋に実店舗を開設することにした。
店舗には金融機関で住宅ローンの取り扱い経験があるスタッフを配置し、住宅ローンの借り換えに関する高度なコンサルティングサービスを提供する。全国120の銀行が提供する住宅ローンを比較して絞り込み、事務手続きまで請け負う。フィーは20万円と高額だが、ユーザーに受け入れられるのか。中山田は自信を見せる。
「借り換えによって、百万円単位で総返済額を減らせる人はたくさんいます」
今後は大都市圏を中心に店舗網を広げていく方針。年度内にはビデオチャットを利用したサービスも始める予定だ。