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2016.06.14

知識人と政策決定者で異なる「日本の見方」に注視

argus / shutterstock


ワシントンDCに住み、そこで働く者として、学者がこのように「ナショナリズム」、「修正主義」、「慰安婦」に焦点を当てているのは、大変興味深かった。ワシントンDCでは、政策決定者が、主にアベノミクスやTPPといった経済問題や、日米安全保障条約ガイドラインの改定、北朝鮮問題、南シナ海と東シナ海での中国の活動に対処するための日米協力といった安全保障問題を中心に議論している。

その点で、政策決定者の日本の見方と、学術の場における知識人・学者の日本に対する見方が大きく異なると感じざるを得ない。米国では、まるで日本が“2つの異なった国”として見られているかのようだ。一方では、親密で信頼できる経済的パートナーかつ軍事同盟国。他方では、ナショナリズムが強まりつつあり、歴史を書き換えて過去を否定し、世界の他の国々と相容れなくなりつつある国、の2つである。

とはいえ、年次総会でこのような大きな相違が感じられたのは、日本に限ったことではない。満員であった「習近平政権:総合的評価」のパネル・ディスカッションでは、参加した学者は、現在の中国政権による、報道の自由、学問の自由、人権の抑圧に対して極めて批判的であった。

知識人が政策決定者の仕事に批判的な考えを述べられるのは、健全な社会であろう。それでも、ワシントンDCの政策決定者と知識人・学者の間で日本についての見方がこうも異なるという事実は、日米関係の将来に関心のある日本人・アメリカ人がともに心に留めておくべきではないだろうか。

GLEN S.FUKUSHIMA
グレン・S・フクシマ◎米国先端政策研究所(CAP)の上席研究員。米国通商代表部の日本・中国担当代表補代理、エアバス・ジャパンの社長、在日米国商工会議所会頭等を経て現職。米日カウンシルや日米協会の理事を務めるなど、日米関係に精通する。

文 =グレン・S・フクシマ

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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