企業価値6.5兆円 ウーバーの巨額調達に囁かれる「死角」

Uber CEO Travis Kalanick photo by Michel Porro / gettyimages


中国の滴滴も35億ドル以上の調達を予定

アメリカにおけるウーバーの最大の競合であるリフトは、1月に10億ドルを調達しており、このうち半額をゼネラルモーターズが出資た。イスラエルのスタートアップ「ゲット(Gett)」は、フォルクスワーゲンから3億ドルの出資を受け入れている。中国最大手の「滴滴出行(ディディチューシン)」は、アップルから10億ドルと、さらに4億ドルをアリババと、金融企業のアント・ファイナンシャル、テンセントから調達している。滴滴によると、現在実施中のラウンドでの調達額はウーバーの35億ドルを上回る予定で、世界最大のライドシェアリング市場である中国で首位の座を維持するための投資に使うという。

ウーバーがこのまま巨額の資金調達を続けることは困難だと考える人は少なくないが、これまで同社はそうした予想を覆してきた。リーク情報によると、ウーバーは2015年上半期だけで20億ドル(約2143億円)の損失を出しているという。恐らく、現状は損失がさらに拡大しているだろう。同社はアメリカ国内で黒字化を達成したとしているが、多くのコストを省いている可能性がある。リフトは先月、フォーブスに対して黒字化に向けた道筋は明確になっているが、今後も大規模な投資を継続していくと述べている。

ウーバーは55億ドルもの資金を今年上期に調達したことで、コスト削減や競合との競争から手を引くことなどを気にせずに、今後数年間に渡って投資を行うことが可能になった。これだけの資金調達力があれば、IPOを目指す必要もないだろう。テック企業にとってIPO市場が冷え込む中にあってはなおさらだ。
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編集=上田裕資

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