放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


たとえば、京菓子司 末富さんには「薫堂」という僕のオリジナルの焼印が置いてあるのだけど、末富さんがその焼印を使ったおせんべい「京ふうせん」を20枚ほど持ってこられた。曰く、「お見舞いに来た方に渡してあげてください」とのこと。それから、弊社のラジオディレクターもギプス姿の僕のイラストに「お見舞いあざっす。」と書いたステッカーを作成して「お見舞いに来た方に渡してください」と言ってくれた。

おわかりのとおり、ふたりの共通点は、「小山薫堂の病室には見舞客がたくさん来るだろうから、彼らを手ブラで帰さないための何か」という視点で、見舞いの品を考えているというところだ。人を慮るというのはこういうことかと、ほとほと感激してしまった。

何度も入院経験のある友人が教えてくれた、「あなたが人生で一番おもしろいと思った本を持ってきて」と先にお願いするアイデアも非常にユニークだと思う。本には見舞客に名前を書いてもらい、“入院生活文庫”として自宅の本棚に置いておく。本を開くと、入院時のいろんな記憶がよみがえるという仕組みだ。

さりげなさの極みでいえば、一澤信三郎帆布の信三郎社長が自宅の庭に咲いていた椿を手折り、江戸時代の古い花瓶に挿して、持ってきてくれたこと(なんと粋だろうか)。あと、さる方が持参してくださった日本地図(退院したら行ってみたい場所を探すだけで楽しい)、男同士だとエッチな雑誌の差し入れってよくあるけれど、京都市長が持ってきてくれた春画展の分厚いカタログなどは、センスが光っているなあと感じた。

そのような稀有な状況だったので、僕自身も「いらっしゃる方をおもてなししなきゃ」と思い、病室をお茶室と捉えることにした。名前は「惚節庵(こっせつあん)」。そう名付けた瞬間から、入院が楽しくなったのは言うまでもない(笑)。

辻村さんがお見舞いで持参してくれたお茶碗で点てたお抹茶と、末富さんの京ふうせんでおもてなし。病室まで足を運んでくださった方々が非常におもしろがってくれて、僕もとても有意義な時間を過ごすことができた。

一流シェフが病院食をさらに美味しく

入院中にもうひとつ考えたのが、病院食のさらなるクオリティ向上である。病院食は不味いというイメージがあったのだが、今回食べたら普通に美味しくて驚いた。入院患者にとって「食」は元気回復のための精神的な薬のようなもの。病院食が美味しいというのは、それだけで社会貢献ではなかろうか。

そこで病院食をつくるメディカル給食センターが料理について相談できる、一流シェフのネットワークを開設するのはどうだろう。弁護士費用がない人が利用する「法テラス」になぞらえ「シェフテラス」と名付けて、「一定の栄養価でカレーをもっと美味しくするためにはどうしたらいいですか」「珍しい食材があるんですが、調理方法を教えてください」というような給食センターからの相談を、登録しているシェフが解決するのだ。たまにはシェフ直伝のメニューを開発して、それは入院1カ月の節目で無料で食べられたりしてね。

しかもそのシステムは病院食で始まって、学校給食、さらには一人暮らしの高齢者の食事を支える骨子にまで成長するかもしれない。味の素さん、キユーピーさん、日清食品さん。企業が大きく育った恩返しに、ここで一役買いませんか。

イラストレーション=サイトウユウスケ

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