そもそもこの構図は、戦後の爆発的な人口増加による住宅不足を解消するため、1966年に「住宅建設計画法」が策定され、住宅供給数の目標が作られたところから始まった。かつての日本にはいわゆる「住宅供給目安」があったわけだ。
しかし住宅数はとうの昔に足りていたのに「景気回復のため」として新築住宅を造り続けてきた。これは「住宅建設は経済波及効果が高い」といった前提に基づくもので、景気対策と言えば新築住宅建設促進策がとられてきた。
戦後40年間続けてきた先の「住宅建設法」。さすがに2006年3月に廃止になったのだが、これまでで新たな数値目標、目安は策定されていない。
モノの価格は「需給」で決まるが、それは住宅も例外ではない。我が国は今後本格的な少子化・高齢化が進み、生産年齢人口は大幅に激減。住宅購入層である30-40歳代の社会保障負担割合が増加することなども住宅市場には大きなダメージとなる。
清水千弘氏(シンガポール国立大学不動産研究センター教授)らの研究によれば、このまま少子化が解決せずに高齢者割合が増加、現役世代負担率が上昇すれば、地価を押し下げ、日本全体の住宅価格は2010年から2040年にかけて46%下落するとしている。2,000万円の住宅がわずか1,080万円になるというわけだ。
しかしこれはあくまで全国平均。実際には立地によってその騰落は大きく異なりそうだ。たとえば首都圏を見てみよう。一言でいえば、鉄道路線によってものすごい格差が広がる可能性が高い。
首都圏の21路線を対象とした国土交通省の「人口増減率」シミュレーションによれば、2035年、田園都市線は夜間人口が20.7%増、生産年齢人口が6%増とともに将来において増加が見込まれており、それに京王線、東横線が続く。一方で最下位は東京スカイツリーライン(旧東武伊勢崎線)。夜間人口・生産年齢人口ともに著しく減少し、とりわけ生産年齢人口は36.1%も蒸発する。全体として極端な「西高東低」の傾向にあることがみてとれるだろう。