「深層対話力」を磨くと、自然に身につく「人間関係力」[『仕事の技法』著者インタビュー 最終回]

田坂広志氏

本誌「Forbes JAPAN」の人気連載「深き思索、静かな気づき」の田坂広志氏が、『仕事の技法』(講談社現代新書)『人間を磨く』(光文社新書)を立て続けに上梓。今回は『深層対話力』の先にある、さらに広い世界について語ってもらった(過去記事はこちら;第1回第2回)。

Q:この『仕事の技法』では、「言葉以外のメッセージ」を感じ取る力という意味で、「深層対話力」を述べられていますが、逆に、「言葉以外のメッセージ」を伝える力も、「深層対話力」と呼ぶことができるのでしょうか?

田坂:その通りです。今回の『仕事の技法』では、「言葉以外のメッセージ」を感じ取る力を中心に「深層対話力」を語りましたが、「言葉以外のメッセージ」を伝える力という意味での「深層対話力」も、極めて重要です。

この「伝える力」の「深層対話力」を身につけるならば、例えば、若手社員の時代には、社内での会議において、上司や参加者の発言に適切なタイミングで頷くことによって、無言で「賛同のメッセージ」を伝えることができるようになります。また、商談において、上司の傍に、心を添わせ、真摯な面構えで控えることによって、顧客に無言で「好印象や信頼感を与えるメッセージ」を伝えることができます。

そして、こうした「言葉以外のメッセージ」を伝える能力を、若手社員の時代に磨いておくならば、自身がマネジャーや経営者になったとき、さらに優れた能力が開花します。

例えば、「あのマネジャーは、黙って、そこにいるだけで、職場が生き生きとする」と評されるマネジャーや、「あの経営者は、静かな目配りだけで、人を動かす力がある。存在感のある人だ」といった評価を受ける経営者は、若い頃からの修行を通じて、見事な「深層対話力」を身につけています。

ちなみに、私は、世界経済フォーラムのGlobal Agenda Councilのメンバーでもあるので、毎年、ダボス会議に出席していますが、このダボス会議でスピーチを行う、トニー・ブレア、ゴードン・ブラウン、デーヴィッド・キャメロンなどのイギリス元・現首相ら、アンゲラ・メルケル・ドイツ首相、ニコラ・サルコジ・フランス元大統領、ウラジーミル・プーチン・ロシア大統領、ビル・クリントン・アメリカ元大統領などの世界のトップリーダーの話術を間近に見てきました。

そこで、いつも感心するのは、彼らは、いずれも、「言葉のメッセージ」の発し方も見事ですが、例外なく、「言葉以外のメッセージ」の発し方が見事です。このメッセージの技法については、拙著、『ダボス会議に見る世界のトップリーダーの話術』(東洋経済新報社)に詳しく述べましたので、興味のある方はご覧ください。
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インタビュー=フォーブス ジャパン編集部

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