会議と商談の後の5分が、才能開花の分かれ道[『仕事の技法』著者インタビュー 第2回]

田坂広志氏


そして、その「深層対話」の力を身につけていくと、会議力や営業力、マネジメント力や交渉力など、様々な才能が開花していきます。ある意味で、会議と商談の後の5分が、才能開花の分かれ道なのですね。

Q:この「深層対話」の技法は、それを身につけると、「相手の心の動きが分かる」という意味で、どのような職業分野においても、プロフェッショナルとして極めて大きな力を発揮すると思いますが、そこに落とし穴は無いのでしょうか?

田坂:ありますね。大きな落とし穴があります。それは、「心の中に無意識の傲慢さが忍び込む」という落とし穴です。

すなわち、「相手の心の動きが分かる」という能力は、相手の気持ちを分かってあげる、相手と互いに理解しあう、相手が欲している力を貸してあげる、ということに使うならば、素晴らしい能力になるのですが、「自分には相手の心が分かっている」という密やかな驕りが心に忍び込み、無意識の「上から目線」で相手に接したり、相手を意のままに操ろうという「操作主義」に流されるならば、むしろ、人間関係を損なう最悪の能力になってしまいます。
 
なぜなら、我々の心の中にある「無意識の傲慢さ」や「密やかな驕り」もまた、「言葉以外のメッセージ」を通じて、必ず、相手に伝わってしまうからです。

その意味で、この「深層対話力」を本当に身につけていくためには、相手に対する敬意を失わない姿勢や、自分自身の心の中の「小さなエゴ」を見つめる姿勢を、同時に身につけていくことが不可欠です。

これは、あたかも、剣道の修行をする人間が、剣術という能力を磨くだけでなく、「人間を磨く」ということを教えられるのと同様です。

ある意味で、この「深層対話力」とは、極めて切れ味の良い剣ですが、その使い方を誤るならば、相手も自分も傷つけてしまう「両刃の剣」でもあるからです[インタビュー最終回は、6月20日公開]。

インタビュー=フォーブス ジャパン編集部

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