会議と商談の後の5分が、才能開花の分かれ道[『仕事の技法』著者インタビュー 第2回]

田坂広志氏

本誌「Forbes JAPAN」の人気連載「深き思索、静かな気づき」の田坂広志氏が、『仕事の技法』(講談社現代新書)『人間を磨く』(光文社新書)を立て続けに上梓。今回は『仕事の技法』の中でも最も効果的な技法について、具体的に語ってもらった(第1回記事はこちら)。

Q:『仕事の技法』では、「走馬灯リーディング」「即実践リーディング」「事後の経験反省」「事前の場面想定」など、いくつもの技法が紹介されています。最も大切な具体的技法を紹介して下さい。

田坂:やはり、「事後の経験反省」の技法、特にその中でも、「直後の反省」の技法ですね。

この技法は、会議や商談の後、頭の中で、その会議や商談を追体験しながら、「こちらの話に対して、相手の表情や眼差し、仕草や身振り、態度や雰囲気は、どのような『言葉以外のメッセージ』を伝えてきたか?」「相手の語る言葉の奥には、どのような『言葉以外のメッセージ』があったか?」を振り返るという技法です。
 
例えば、社内での企画会議においては、「企画課長は『面白い企画だな・・』と言ってくれたが、どうも、あの表情から見ると、この企画をあまり評価していないな…」と振り返ることや、社外での商談においては、「お客様は、提案に対して、色々と問題を指摘してきたが、あの真剣な目つきからすると、契約そのものには、前向きだな…」といった形で振り返ることです。

こう述べると、「それは、当たり前だろう…」と思う方もいると思いますが、実際には、忙しい日々の仕事の中で、会議や商談において「直後の反省」を必ず行う人は、決して多くありません。ほとんどの場合、ただ漫然と心の中で、その会議や商談を、断片的に振り返っているだけです。

しかし、もし、この「直後の反省」を習慣にして、その会議や商談の場面を時間の流れに沿って追体験し、意識的に振り返るならば、会議参加者や顧客の「無言のメッセージ」を感じ取る力が高まり、確実に「深層対話力」が身につくでしょう。そして、その結果、我々の仕事力は、圧倒的に高まるでしょう。

しかも、この「直後の反省」を行うためには、実は、あまり多くの時間を要しません。例えば、1時間の会議や商談を、頭の中で追体験し、振り返るのには、せいぜい5分しかかからないのです。それも、会議室から自室に戻るまでの数分間や、商談先から自社へ戻るまでの移動時間を使うだけなので、仕事にそれほど大きな負担にはなりません。

ただし、この「直後の反省」の技法には、やはり、「追体験」をどう行うかや、「反省の視点」をどう身につけるか、複数のメンバーでの「反省会」をどう行うか、といったポイントがあります。そのことは、この『仕事の技法』に具体的に書きましたので、参考にして頂ければと思います。

いずれにしても、この会議や商談の後、わずか5分間、「直後の反省」に使うだけで、驚くほど、相手の心の動きが分かるようになってきます。
次ページ > 「深層対話」の技法に潜む落とし穴とは

インタビュー=フォーブス ジャパン編集部

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事