例えば、スペースXは「ロケットを再利用することで、現在、約6,100万ドル(約67億円)かかっている打ち上げコストを500万〜700万ドル前後にまで引き下げられる」と考えている。ちなみに、ファルコン9の場合は、開発の初期段階に4,000万〜5,000万ドルほど投じており、最もコストがかかっているという。
他にも、リチャード・ブランソン率いる英民間宇宙開発会社「ヴァージン・ギャラクティック」が再使用可能な宇宙船をつくっている。
また、先ごろ、国際宇宙ステーション(ISS)へ補給物資を輸送することが決まった米航空宇宙開発企業「シエラ・ネバダ・コーポレーション」もリサイクルに取り組んでいる。同社が開発したスペースシャトル型宇宙船「ドリームチェイサー」は、最低15回も宇宙飛行に使える点がウリだ。洗練されたデザインと性能により、整備にかかる負荷も軽減。そのおかげで、スペースシャトルよりもはるかに安い価格で飛ばせる。
もちろん、「リサイクル」によってコスト削減が約束されるわけではない。ロケットの移動や検査、整備、燃料補給にかかる費用は小さくない。それに、着陸時のための燃料を取っておけば、機体の積載重量は増すため、その分だけ小型衛星などの打ち上げ資材が載せられなくなる。衛星打ち上げが大きな稼ぎ口となっているだけに、儲けが減ってしまうなど、いいことばかりではない。
それでも、打ち上げコストを減らすことは、スペースXや宇宙業界全体にとって意味のあることだ。ロケットの再使用が当たり前になれば、スタートアップや他の大企業が打ち上げにかけているエネルギーや資金を、新たな研究開発に回せるようになるのだから。
■ロケットの再利用にかかる「コスト」
移動:着陸場所から打ち上げ施設まで、ロケットを移動させるには膨大なコストがかかる。スペースXは洋上の台船に垂直着陸させているが、それでも移動コストは高い。
燃料補給:スペースXによると、費用は20万ドル(約2,200万円)。ロケットには着陸用の燃料と機材を積み込む必要がある。そのコストも6,100万ドルの打ち上げ費用に含まれる。
検査:スペースシャトルを使用していた頃は、耐熱タイルを1枚ごとに検査するなど、整備に膨大な時間とコストがかけられた。いまでは、設計の面でも大幅に進歩している。
機材:任務を滞りなく終えることができたとしても、ロケットの機材に故障や破損はつきもの。修繕する際にも、多くの部品交換が必要となる。