だがブローリーは、携帯電話にがんを引き起こすリスクがあるとしても、それは小さなものである可能性が高いとも強調する。彼の推定によれば、神経鞘腫や神経膠腫になるリスクが増大するとしても、最大で20~40%増。数字を見るとかなりリスクが高まるように思えるかもしれないが、喫煙による肺がんのリスク増大幅は1000%(10倍)だ。
そしてブローリーの神経鞘腫に関する主張に、ラウアーはまったく納得していない。ラウアーとベリーは、今回の研究にはあまりに問題が根深く、いかなる結論を導き出すこともできないと考えている。
たとえば、がんのリスク増大が見られたのはオスのラットだけで、メスのラットに見られなかったのは何故なのかという疑問がある。研究のそのほかの結果が発表されていないことも疑問だとラウアーは指摘している。
確かに、携帯電話が一部の希少ながんを引き起こすことはあり得る。もしかしたら、ヘッドセットを着用する価値はあるのかもしれない。だが同時に、もしも携帯電話がなんらかのがんを引き起こすとしても、それは稀なことであり、私たちが日常生活の中で直面する発がん性物質の中で最大のものという訳でもないことも頭に入れておくべきだ。
携帯電話には、たとえば必要な時に医師や救急車を呼ぶことができるなどの利点もあり、リスクとのバランスを考えるべきだ。要するに、今回の研究報告を理由に、携帯電話の使用を恐れるべきではないのだ。