たとえば最近の研究では、頭の体操のためにつくられたコンピューター・プログラムよりも、ヨガや瞑想の方が効果的である可能性があることが示された。そして今回、オンライン科学雑誌Frontiers in Aging Neuroscienceに発表された新たな研究では、年齢を重ねても忙しく活動している人もまた、記憶力や認知力のテストでより優れたスコアを記録する可能性があるとの所見が示された。とはいえ、忙しさにも種類があることを覚えておくことも重要だ。
テキサス大学ダラス校の研究チームは、記憶力と認知力を異なる複数の側面から測定するために、59~80歳の被験者330人を対象に、神経心理学のさまざまなテストを実施した。被験者たちは、自分がどれくらい忙しいと感じているかに関することも問われた。「平均的な日はどれくらい忙しいですか?」「やらなければならないことが多すぎて、普段よりも寝るのが遅くなることはどれくらい頻繁にありますか?」などといった質問だ。
その結果、より忙しいと報告した人の方が、そうではない人に比べて作業記憶と推理力が優れており、語彙も豊富だった。また忙しさとエピソード記憶機能、つまり、過去の出来事を思い出す力にも特に強い関連が見られた。
今の時代、多くの人が「忙しすぎる」と感じている、そしてそのことにストレスを感じることが多いが、今回の研究はその忙しさに、新たに前向きな見方をもたらすものとなるかもしれない。
しかし研究には幾つかの限界もあり、忙しさと認知力や記憶力の関係において、どちらがどちらに影響を及ぼすのかははっきりしていない。忙しいからそれらの機能がより磨かれるのか、それとも、記憶力や認知力が優れているから、より長く忙しく活動し続けることができるのかは、はっきりしていないのだ。
より教育水準の高い人の方が精神能力が高いため、認知力の低下をより長く食い止めておくことができると示す証拠もある。あるいは、忙しくしている人は体を動かすことも多く、それが認知機能を維持しているのかもしれない。