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1990年夏、日経平均は30,000円を上回っていた。以来、24度目の夏を迎えたいま、日本株は、根本的に「負のトレンド」から脱したと筆者は言う。その理由とは。

 私が初めて日本株と出合ったのは、1990年の夏、大学最後の学期を終えるためにアメリカへ帰国する直前、新日本証券の株式先物グループでインターンをしていた頃のことだった。90年といえば、80年代に膨張し続けた巨大なバブルが崩壊し始めた最初の年であり、加えて、その年の8月にイラクがクウェートに侵攻し、第一次湾岸戦争が勃発した。

 株式市場にとっては最悪の材料の組み合わせだった。

 その頃、私は多くの若い男性社員と一緒に荻窪の(エアコンも無い!)独身寮で暮らしていた。 社員寮の住人のほとんどはバブル期に入社しており、90年の軟調は一時的なものだと思っていた。私たちはみな若く、将来に対して楽観的だったのである。
 90年の夏は、日経平均が30,000円を上回った最後の夏になった。
 平成に入ってから(私の金融マンキャリアと同時期に当たる)、日本株はほぼずっと下げ相場だ。確かに、日本株はかなり高い株価水準で平成に入ったため、下げにおいて、かなりの下げ幅があったことは事実だ。そして、デフレにも直面し、関連した下げ要因は山のように存在していた。
 デフレの原因は誰も明確には言えない。比較的短期間での急激な資産価格の下落で始まることは知られているが、資産価格は下落と同程度のスピードで回復することも多い。しかし、次の理由で日本は例外となってしまった。

1) インフレ率が下がると、資産の「実質利回り(名目利回りからインフレ率を差し引いたもの)」が上昇して、為替も値上がりすることが多い。日本経済は、輸出セクターの占める割合が高いため、このことが他国の経済に比べて企業利益にダメージを与えることになってしまった。日本銀行は、これを防ぐために昨年本格的に実施したようなもっと強い金融緩和策を推し進めるべきであった。
2) デフレはほぼ全てのものの価格(と利益)を押し下げてしまうが、企業の円ベースの負債を減らすことはない。従って、企業は負債を減らし、手元にキャッシュを多く残すという対応をする。個人の家計も同様だ。
3) 日本は労働法上、社員の解雇がしづらく、労働力が不要になったときにも従業員を雇い続ける。このため、企業の収益はさらに圧迫され、企業はさらに負債を返済することに目を向けるようになった。

 これらの負のトレンドは、20 年にわたり、強まっていった。90年(私が新日本証券にいた頃)の日本のGDPは約450兆円であったのが、昨年は約492兆円である。23年間の平均伸び率は1%未満。ひどい! 同じ期間に米国のGDPは約6兆ドルから16.8兆ドルへ成長した。
 この悪循環終焉への第一歩は、2010年から2011年にかけて、日本銀行が日本のデフレ脱却に対してもっと責任を持つべきである、との社会的合意が形成されたことであった。日銀の白川総裁の対応は不十分なものではあったが、日銀の独立性を維持し続けるには日本銀行がもっと積極的に動かなければいけない、というマインドを国民に植え付けることはできた。
 デフレ脱却への二歩目は東日本大震災だ。私が知る限り初めて、普通の日本人が大変な恐怖に陥り、「日本の終わり」について語るようになったのである。
 そして最後の一歩が尖閣諸島問題である。中国市場(香港含む)の株式時価総額は2007年に日本のそれを抜いたのだが、そのことは日本経済新聞ですら報道しなかった気がする。しかし、日本の経済力が弱まったために、尖閣諸島問題で物理的な主権をも脅かされ始めていることが明確になった。
 そして、ここでスイッチが入った。

 私が日本株に対して強気な第一の理由は、こうした経験を経て、日本全体が、デフレはうんざりだとやっと思うようになったことである。裏返してみれば、経済的な打撃と地政学的なリスクとが、もう従来路線ではやっていけないところまできてしまったということだ。
 デフレを成敗した暁には、20年かけて絡み合った「(ソロスの言葉を借りれば)反射的デレバレッジ」が次第にほどけ始めるであろう。それはつまり、悪循環から好循環への転換である。
 二つ目の理由は、バランスシートとは対照的に企業も痛みに耐えきれなくなり、事業のリストラに着手し始めたことである。この動きは、(私の認識としては)2011年から2012年にかけて始まり、流れとなって強くなってきている。もちろん、過去18カ月の円安傾向も追い風にはなっているが、例えば明治ホールディングス、江崎グリコ、USEN、サンケン電気、パナソニック、NECといった国内市場に特化した企業の大幅な業績の回復を、円安では説明することができない。これらの企業はほんの一例であり、円安の恩恵を受けていないにもかかわらず、収益性を劇的に上げることに成功した企業は相当数に上る。パナソニックは、テレビ事業発祥の工場を売却することを発表したが、これは同社にとってルビコン川を渡るようなことであっただろう。
 三つ目の理由は、ものを言わない株主だった人たちが、もの言う株主へと変わってきていることと、リターン重視の経済がかたちづくられていることである。こういった変化の、少なくとも一部の立役者は安倍内閣である(そして、評価されてしかるべきである)が、これはトップダウンの指示だけで成し遂げられることではない。これだけ大きな痛みをくぐり抜けてきた結果、日本社会がこのような考え方を受け入れることができるようになったのである。より高いリターンを得ようとすることが「流行」してきているのである。

 私が日本市場に対して強気な最後の理由は、日本株が現在安く、デフレ脱却によるリターンの改善が現在の価値に含まれていないことである。SPX(S&P500種指数)がPE17.9xで売買されるなか、日本株はPE14.9xで売買されている。日本株は、バブル前以来の水準で、米国に比べてずっと割安に取引されているのである。

 20年にわたるデフレは、1990年に新日本証券の同僚たちが持っていた若き楽観主義を木端微塵に打ち砕いた。しかし、いま、それを取り戻す時がきているのである。

デービッド・スノーディ

 

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