岸田祐介が創業したスターフェスティバルは、企業の会議やイベント向けに、叙々苑や美登利寿司といった有名店の「ごちそう」約600ブランド7,000種を届ける、弁当・ケ ータリングの総合モール「ごちクル」を運営している。7月には、アスクルと資本・業務 提携を行い、総額28億円の資金調達を実施。2009年7月の創業以来、右肩上がりに成長を続ける、いま注目を集めるスタートアップの1社だ。仮屋薗聡一がマネージング・パートナーを務めるグロービス・キャピタル・ パートナーズと、グリーベンチャーズは12年8月、当時資本金300万円だった同社に2億5,000万円の投資を行った。
仮屋薗:私がスターフェスティバルの岸田さんとはじめてお会いしたのは、12年春です。きっかけは小澤隆生(現YJキャピタル代表取締役)さんからの紹介です。私にとって、小澤さんは、VC初期の投資先の創業者で、 非常に紆余曲折もあった、記憶に残る経営者でした。その彼がエンジェル投資家として育てた企業のひとつを紹介してもらい、バトンを渡してくれてとてもうれしかったことを覚 えています。
私が“起業家の条件”として重要視しているのは、
1「高邁なビジョンをもっているか」、
2「高邁なビジョンに対して信念と覚悟をもって行動できるか」、
3「会社全体に成長実感をもたせることができるか」
の3つです。
岸田さんはいずれも兼ね備えていますが、特に「会社全体に成長実感をもたせる」こと、 社員全員がワクワクしながら働き、自分たちが成長しているという実感をもち、会社全体 が日々進化していくという雰囲気をリーダーが醸成する―という点がこれまでの投資先の中でも1、2を争うほど優れています。
岸田さんはチームづくりに関して、能力はもちろんですが、かけているエネルギーが違う。表彰制度からハロウィンや運動会などのイベント、日ごろのコミュニケーションまで気を配っている。スターフェスティバルの競争優位は、岸田さんの組織や人に対する考え方にあると思います。
岸田:いちばん活躍した人を選ぶ表彰制度 “セクシー賞”は、月1回の表彰ですが、社長ではなく、全社員で選びます。いま社員が300名近くいるので、社長だけでは把握できません。また、実績評価だけでは、結果的にお客様の喜びにつながる、誰の目にも映らない地味な作業に光が当たりません。だからこそ、現場の人間に“見えない仕事”を見つけ、評価してもらっています。
スターフェスティバルには、急成長のベンチャーに身を置きたい人も、食産業を変えたいという人もいます。キャリアも、物流業界 にいた人から農家をやっていた人までいる。 I T 以外の領域からの採用が多い。だからこそ、ひとつの同じ方向を見ているようにしたい。その根本こそ“情熱”だと思っています。
(中略)
仮屋薗:岸田さんは「お客様を幸せにしたい」という言い方をしていますが、仲間を幸せにしようと、親身になって考えています。さまざまなバックグラウンドや夢をもった人たちが集まり、そういう人たちが元気に輝ける場としてスターフェスティバルが存在している。事業創造を通じて輝ける場を、まずは身近な 社員から、そしてその先のお客様へとつなげています。いい「幸せの連鎖」を起こしている。今後はもっと大きなレベルで世界に幸せの連鎖を起こしてほしいと思います。