ネットフリックスが反発する「EUの奇妙なルール」

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今年に入り130か国以上でサービスを開始したネットフリックスだが、各国の規制をクリアする奮闘が続いており、世界進出は複雑化している。同社が直面する最新の課題はEUの新規制だ。提供する全コンテンツに占めるヨーロッパのコンテンツの割合を20%以上と定めているほか、ヨーロッパのコンテンツの“プロミネンス(目立たせること)”が求められている。

新規制は5月25日に正式に発表される予定だ。アメリカやヨーロッパのユーザーにとっては、「ヨーロッパのタイトルを目立つようにする」というあいまいな条件がどう影響するのかが気になるところだ。“プロミネンス”が何を意味するのか、正確なところは不明であり、EU諸国のみに適用されるのかネットフリックスがサービスを提供しているすべての国に影響するのかも分かっていない。

欧州産コンテンツを「目立たせろ」との命令

一つの可能性として考えられるのは、お気に入りのタイトルやハリウッドの人気タイトルの代わりにヨーロッパのコンテンツが表示されるというケースだ。ネットフリックスの売りの1つはユーザーの好みに応じて表示するコンテンツをカスタマイズしていることだが、「ヨーロッパのコンテンツを目立たせる」という要求に、いかに折り合いをつけるのかが課題となるだろう。

ヨーロッパのコンテンツが占める割合に関する規制については、ほとんど影響はないだろう。欧州委員会の調べによると、ストリーミングサービスが提供しているコンテンツの27%がヨーロッパのコンテンツで、ネットフリックスに関しては21%に達している。メディア調査会社Ampere Analysisの調べでも、ネットフリックスとアマゾンではヨーロッパのコンテンツが20%以上を占めているという。

調査会社eMarketerのメディア・アナリストであるポール・バーナは「ネットフリックスはすでに「ナルコス」や「マルコ・ポーロ」などのオリジナル作品をはじめとするローカル・ユーザーをターゲットにしたコンテンツを提供し始めているので、新規制は大きな問題にはならないはずです」と分析する。

しかし、ネットフリックスはすでに欧州委員会に対し新規制を批判する書簡を送ったとフィナンシャル・タイムズ紙が報道している。「(コンテンツの)割り当てを数字で決めてしまうことは、オンデマンド・オーディオビジュアル・メディア・サービスのマーケットを抑圧するリスクをはらんでおり、新たなプレーヤーが持続可能なビジネスモデルを確立することを困難にしかねない」とネットフリックスは主張する。

ヨーロッパのコンテンツが占める割合が決められてしまうと、ネットフリックスは本当は欲しくないコンテンツも買い付ける必要が出てくるかもしれない。バーナは「新規制が導入されても致命的な影響は出ないと考えますが、安いコンテンツを購入せざるを得なくなるかもしれません」と言う。

「ビジネス手法の変更を余儀なくされるのを好む企業はありません。新規制は1つの課題になるかもしれませんが、ビジネスが立ち行かなくなるようなものではないでしょう」

ネットフリックスはフォーブスに対しコメントを控えるとした。アマゾンからも返答は得られなかった。

編集=上田裕資

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