ビジネス

2016.05.28

「すべてのお客様が特別」ボッテガ・ヴェネタの戦略

ボッテガ・ヴェネタの カルロ・アルベルト・ベレッタCEO (photograph by Tadahiro Miki)


「最初にシューズにフォーカスしたのは、すでにレザーグッズの中心的役割を果たしており、幅広い顧客にアピールできる商品だったからです。ボッテガ・ヴェネタのバッグを全員がすぐに買えるわけではありません。しかしシューズは価格的にも手に取りやすいアイテムです。今後は、新しい若い顧客層にもリーチする手段として、シューズのほかウェア、ジュエリー、アイウェアに力を入れていきます。また、昨年3月にはミラノに家具や食器類を扱う専門店もオープンさせました。この4月のミラノ・サローネではホームコレクションの新作も発表する予定です。こうした流れは、ブランドコンセプトをライフスタイル全体で完結させたいというトーマスの意向の延長線上にあるもの。ただ、ホームコレクションは特別なアイテムであり、当分は限定的な扱いに留めるつもりです」

このほかにも、2011年からは高級フレグランス市場のトッププレイヤーであるコティ・プレステージと組んでフレグランスを展開。現在では女性用・男性用香水各種から、バスコレクションまで幅広い品揃えを誇っている。一方でベレッタ氏は、こうした商品レンジの拡充と並ぶ、もうひとつの重要な戦略を語ってくれた。それが個々の顧客との関係性の強化である。

「私たちは製品のクオリティに絶対の自信を持っていますが、同様に最高のクオリティを、顧客サービスや店舗環境にも適用するべきだと考えました。それには“すべてのお客様が特別”とする大きな意識変革が必要です。これからは顧客の方々とワン・トゥ・ワンの強固な関係を築くことを重視します。その一環として2015年に新サービス『クライアント・コンシェルジュ』をスタートしました。これは、商品情報や在庫についてなど顧客からのあらゆるリクエストにオンラインで応えるもので、特に若い世代の顧客との良好な関係構築に有効だと考えています。欧州と米国ではすでにローンチし、もうすぐ日本と中国で始める予定です」

そして、実店舗に関する取り組みについては、さらに以下のような答えが返ってきた。

「現在、直営店は世界で約250店舗。この数年間は毎年、新規出店を続けてきました。しかしこれからは店舗数はキープしたまま、新しいレンジの商品を迎えるために、既存店の立地の見直しや改装を行っていく計画です。昨年、ミラノに世界最大規模の“メゾン”をオープンしましたが、このような全カテゴリーを揃えブランドのアイデンティティを表現するコンセプトが合うのは世界中でもいくつかの都市だけ。5月にオープンする予定のビバリーヒルズ店とその後のニューヨーク店のあとは、メゾンの出店は10年間で数店に抑えます。先ほどの顧客の方々との関係強化に際して、メゾン級の店舗でそれを維持するのは非常にハードルが高い。それよりもより親密な空間で、顧客がボッテガ・ヴェネタの世界を体感できるような細やかなサービスを提供することも大切だと考えています」

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友永文博=文 三木匡宏=写真 高城昭夫=編集

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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