これは、米国神経学会の機関誌「Neurology」で発表された研究報告が指摘したものだ。同研究では、妊娠中に神経や筋肉の痛みを治療するのに使われる薬プレガバリン(商品名リリカ)を使用することでもたらされる結果について検証。プレガバリンは、てんかんや線維筋痛、全般性不安障害の患者に広く処方されている。
研究チームは、7か国で調査を実施。妊娠中にプレガバリンを服用した女性164人と、服用しなかった女性656人を対象にデータを収集し、女性たちの出産後に本人または担当医から再び情報を収集した。
その結果、妊娠初期にプレガバリンを服用した女性は、服用しなかった女性に比べて、出生児に重大な先天異常がある可能性が3倍(服用なし=2%、服用あり=6%)であることがわかった。
研究報告を作成した、スイス・ローザンヌ大学病院のウルスラ・ウィンターフェルドは、さらなる研究が必要だが、プレガバリンが重大な出生異常を引き起こす可能性を重く受け止めるべきだと語った。
「今回の研究で、先天異常の発生率の大幅な上昇が確認されたことは、現時点では、妊娠中は可能な限りプレガバリンの処方を回避すべきであることを示唆している」とウィンターフェルドは言う。「出産適齢期の患者の場合、プレガバリンの処方中は避妊をすすめるべきだ。また患者が妊娠を望む場合、あるいは予想外に妊娠した場合には、その影響を慎重に見直すことが必要だ」
先天異常には、心臓の欠陥、神経系やその他臓器の構造的な問題が含まれる。妊娠中にプレガバリンを服用した女性の出生児は、服用しなかった女性の出生児に比べて、神経系に先天異常のある確率が6倍高かった。
しかし、調査対象の人数が小規模であり、先天異常が確認された全てのケースで女性は同時にその他の薬も服用していたことから「まだ今回の結果が偶発的なものである可能性もわずかに残っている」とウィンターフェルドは話す。「だからこそ、さらなる確認が必要なのだ」
プレガバリンに代わる治療オプションは、その目的によって異なるため、同氏は「患者本人と担当医が、個々のリスク対効果比を考慮した上で治療に関する決定を下すべきだ」と指摘する。
研究に参加したプレガバリンを服用している女性の大部分は、神経障害痛のそれを治療薬としてを使用していた。そのほかの女性の症状としては精神疾患、てんかんや、むずむず脚症候群などがあった。
ウィンターフェルドはこう語る。「今回の研究は、妊娠中のプレガバリン摂取に関する安全性を取り上げた初の研究であり、研究の限界(サンプルの規模、合併疾患・治療による群間差など)もあった。そのため、今回の結果だけでプレガバリンが出生児の先天異常を引き起こすと断言することはできず、今後まだ独立した研究によって確認が行われる必要があることを強調したい」