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2016.05.24

老化を遅らせて「がん」のリスクを軽減、米バイオベンチャーの取り組み

遺伝子専門家でヒューマン・ロンジェビティ創設者のクレイグ・ヴェンター(Jerod Harris/GettyImages)


老化による組織や細胞の変性を遅らせる上で、重要なのが幹細胞−傷ついた細胞を修復する機能を持つ未分化細胞−だ。複数の研究で、高齢者は子どもに比べて幹細胞の数が大幅に少ないことが示されている。

ヒューマン・ロンジェビティでは、生まれた時に幹細胞を保存し、あらゆる異常を修復できるよう編集を行い、患者が年齢を重ねてからそれを体内に戻すことで、病気への抵抗力を回復さえることは可能だと確信している。

こうしたビジョンを掲げる企業は、ヒューマン・ロンジェビティが初めてではない。シアトルのバイオ企業BioVivaのエリザベス・パリッシュCEOは2015年、自ら実験的な遺伝子治療の患者第1号となった。

アルファベット(グーグルの親会社)は、老化による機能低下の改善を目指す子会社Calicoに2億4000万ドル(約264億円)を投資。United Therapeuticsでは、さらに一歩踏み込んでバイオテクノロジーとテクノロジーを融合させ、意識や感情・考え方をソフトウェア・プログラムに保存して“意識のクローン”をつくる計画を掲げている(同社のマーティン・ロスブラットCEOはこれも“不死”の一つの概念だとしている)。

ヴェンダーが2000年にヒトゲノムの配列を解読したときには、約30年以内にがんによる死はなくすことができるとも言われた。しかし、依然がんや心疾患をは じめとする加齢とつながりのある病気は、人々の死因の3分の2を占めている。ゲノム研究のみによってがんを撲滅することは無理かもしれない。だが老化をわずか7年遅らせるだけで、がんや心疾患になるリスクを半分に減らせる可能性はあるのだ。

編集=森 美歩

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