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この記事が書かれた1987年9月、日本社会はバブル経済の熱気に浮かれていた。そんななか、アメリカ人の筆者は、自身の日本での在住経験を振り返りながら、日本社会の「矛盾」を指摘し、日米貿易摩擦の激化や規制緩和の到来を予見している。近代化を望みながら、旧体制を守ろうとする日本経済は「自虐的」だ―。好景気の喧噪そうを離れた筆者が、醒めた目で見た70~80年代の日本を紹介しよう。

 (中略)ちっぽけな家に住まわせ、渋滞を生じさせている日本の政
策は、アメリカであれば、まちがいなく反乱を引き起こすはず
だ。それなのに、日本では支持されている。あまり適切なや
り方でないにせよ、農場や古い家屋、古い商店を保護する政
策は、日本人の琴線に触れるのだ。
日本人の多くは先祖代々、農民であった。ウォール街やロ
ンドンの金融街にいる颯爽とした日本のビジネスマンも毎年、親類が農家を営む地方に帰省していたりするのだ。(中略)日本は、自分たちの歴史や伝統を守ることを簡単にはやめないだろう。おそらく、そうすべきでもない。豊かな文化や歴 史感覚は、国を強くするからだ。
 とはいえ、いまの日本のやり方は、どうしようもなく方向違いで、国の発展を阻害するものだ。現在の保護主義は、住宅を手の届かないものにしているだけでなく、日本人が最も 嫌う形の土地開発を可能にしている。

 なぜか? それは、農家が自分たちの土地をランダムに売り、残りは、さらに値上がりするまで持ち続けるからだ。このような開発の結果、でたらめに風景の中に立ち並ぶアパートの建物や、あまりに小さな土地に建てられているので、ガラクタにしか見えない家々の集まりとなるのである。

「黒船」の襲来を待ち望む経済界
思慮深い日本人は、これがおかしな話であることをわかっている。事実、第二次世界大戦前、日本は世界のどこにも引けを取らない住宅街をつくっているからだ。田園調布は、郊外型の都市モデルとして開発された。そこではいまも、住民が20世紀の害悪から守られている。駅前に住宅を集め、幹線道路を駅からできるだけ離し、小さいけれど完璧に設計され、維持されている公園をつくったのだ。

 田園調布は、現在では世界でいちばん高い住宅地としての価値を誇っている。現代の土地開発業者なら、まちがいなく、田園調布と同じようなものをつくることができる。ただ相当な広さがあり、交通の利便性がよい土地が出てこない限りそれも難しい。おそらく解決方法はある。実際、個人商店の反対にもかかわらず、チェーン店は広がりつつある。税制改革によって、農業関係者は土地を売れるようになるかもしれない。もし、日本政府が、都市部から容易に通える距離にある小さな農地 への税率を上げれば、日本のビジネスマンが買いたいと思える土地を持っていて、それを売ることによって最も利益を得られる農家は、少なくとも売るインセンティブを与えられる。それにより、土地開発業者は、日本の家族にもっと快適な環境でより広いスペースを提供できるようになる。

 アメリカによる圧力も、日本のリーダーの多くが求めている政策変更への口実となるだろう。1987年の春、経団連関係の出版物に、「都市農業の静かなる終焉」を主張する、ある日本人の大学教授の論文が載った。そこでは、政治的な変革は遠からぬうちに起こる、と予想している。外国政府が要求するからだ。 すなわち日本の経済界は、規制緩和を促し、その過程で日本の貿易黒字を減らすような措置をとるための圧力を日本政府にかけるよう、アメリカに訴えていることになる。もちろん、それは一朝一夕で起きるようなことではない。そして、それが実現するまでは、日本とアメリカは、貿易を巡って激しく対立することになるだろう。

ロバート・チャップマン・ウッド

 

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