ヤフー×白馬村の成功にみる「一企業肩入れモデル」の実力

(illustration by Kenji Oguro)


少し話は変わるが、ヤフーはオフィスでも自宅でもない「ベース(BASE)」を、全国につくっている。社内の人、社外の人にかかわらず、オフィスとは違うざっくばらんなコミュニケーションが取れる場所、というのがコンセプトだ。

本社のある六本木には「六」を取って「BASE6」、震災後に石巻につくった「ヤフー石巻復興ベース」、北海道の美瑛町には廃校になった小学校を改修した「美瑛ベース」がある。そして、ずっと宮坂さんが“肩入れ”していた白馬には「白馬ベース」があり、同じく白馬にある宮坂さんの父親の遺した家は、雪にちなんで「ホワイトベース」と呼ばれている。ホワイトベースにはヤフー社員も頻繁に訪れ、そのガレージには社員のスノーボードがずらりと並ぶ。ちなみに、千葉県の館山にある幹部社員の別荘も「館山ベース」と名付けられており、ベースは少しずつ全国で増殖しているようだ。

日本は“課題大国”だ。特に地方には雇用・教育などの問題が山積みである。だが課題を解決することはビジネスを創ることに繋がる。考え方を変えれば、日本はビジネスチャンス大国なのだ。

ただ、あらゆるビジネスを取り巻く環境が急速に変化するなか、誰がどの課題に取り組むのかを、みんなで考えている暇はない。新入社員でも社長でも、誰が言い出してもよい。例えば、生まれ育った場所、好きな食べものの名産地など、理由は何でもいい。手を挙げた人をリーダーに、1企業が1つずつ、どこかの地方に“肩入れ”して片っ端から課題解決すれば、日本がもっと楽しく、いい国になるような気がする。

後藤陽一◎電通総研Bチーム「エクストリームスポーツ」担当としてアクションスポーツや山岳スポーツ関連のプロジェクトを多く支援。国連世界観光機関「山岳リゾートカンファレンス」パネリスト。趣味はバックカントリースキーで、白馬村に頻繁に出没。

電通総研Bチーム◎電通総研内でひっそりと活動を続けていたクリエイティブシンクタンク。「好奇心ファースト」を合言葉に、社内外の特任リサーチャー25人がそれぞれの得意分野を1人1ジャンル常にリサーチ。各種プロジェクトを支援している。平均年齢32.8歳。

後藤陽一=文 尾黒ケンジ=イラストレーション

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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