バドワイザーの大胆戦略、期間限定でブランド名を「アメリカ」に

Photo: Anheuser-Busch


しかし、ブランド名称変更のリスクは、とてつもなく大きい。既存の、かつ忠誠心のある顧客は、名称変更にともなってビールそのものも変わると考えるかもし れない。そうなれば、何世代にもわたって築かれてきた顧客との関係が終わってしまう可能性もある。調査会社ミルワード・ブランドが2015年に実施した調 査によれば、ブランドの名称変更は売上の5~20%減少を招きかねない。

最悪なのは、ブランドの名称変更が単なる姑息な策略と受け止めら れる可能性だ。今回の名称変更は、SNSでよく見る“ピアノを弾いている猫”の動画と同じくらい真実味がなく、ただ人々の注意を引くための愚かな行動だ。 このくだらないマーケティングの本質を見抜き、それを拒否する人々――ほかのどの世代よりも広告や巧妙な仕掛けに懐疑的なミレニアル世代――こそが、バド ワイザーが最も必要としている人々であるはずなのに。

それでも、全ての人がバドワイザーの名称変更に問題を感じているわけではなさそうだ。大統領選挙で共和党の指名獲得が確実となっているドナルド・トランプは、今回の名称変更を自分の手柄にしている。

「バドワイザーが夏の間、ビールの名称を変更しますが、それはあなたと何か関係があるのでしょうか?」Foxニュースの記者が、トランプのスローガンである「アメリカを再び偉大な国に」に絡めてこう尋ねると、彼はこう答えた。

「あると思う。バドワイザーは、この国が偉大な国になることに大きな感銘を受けて、現実がそうなる前に名称を変更しておこうと決めたのだ」

編集=森 美歩

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