この戦略は、ある意味で巧妙だといえる。トランプは、夫に裏切られた過去を持つクリントンは、女性たちに対して弱みがあるとみている。クリントンは1990年代、夫のスキャンダルをもみ消すために奔走。夫を批判する人たちを攻撃した。
トランプは米紙ニューヨーク・タイムズの電話取材に対し、次のように述べている。
「女性たちは、クリントン夫人が男性たちに侮辱されたり、いじめられたりするのを見るのを嫌がった」そのため、自分はより戦略的に「クリントン元大統領の不倫に対するヒラリー夫人の判断に疑問を呈したいと思う。夫妻に近い人たちは、夫人がその女性(不倫相手)の名誉を傷つける行動を取ろうとしたと話している」
「ヒラリーに嫌な態度を取っても効果はない」というトランプはさらに、こう語った。
「多くの人たちに、彼女がどんな人物かをよくみてもらう必要がある。そして女性有権者らに、よく考えてもらうのだ。ヒラリーは本当に誠実で、信頼に足る人物なのかと。ビルの愛人を打ちのめそうとしていたときの彼女は本当に見苦しかった。ヒラリーは権力の座を手に入れることにしか関心がなく、そのために女性たちに迎合しているだけだ」
だが、こうしたトランプの主張が功を奏する可能性はあるだろうか──いや、ばかげた言い分だ。次の4つの理由から、効果はないといえる。
─政治的な話題として古すぎる
ビル・クリントンの弾劾裁判が行われたのは1998年で、大統領を退任したのは2001年。若い有権者たちは、これらを知りもしないだろう。誰もこの問題を気にとめないはずだ。(2012年にリビアで米領事館が襲撃された)ベンガジ事件での国務長官としてのヒラリーの対応や、ホワイトウォーター疑惑についても追及しようと考えているようだが、こうした話に関心を持つのはすでにトランプ支持を固めている人たちと、まったく投票する気がない人たちだけだ。