「スーツで遊ぶ」を叶える卓越した技術

スーツ410,000円、シャツ96,000円、タイ22,000円、チーフ17,000円(すべてエトロ/エトロ ジャパン 03-3406-2655)(photographs by Junji Hirose | hair by hiro TSUKUI)

「スーツで遊ぶ」。社会人にとって当たり前の日常着であるスーツ。そして、働くことと対極にある、遊び。このふたつを結びつけることは簡単なようで、いざ「スーツで遊ぼう」と考えると難しい。なぜなら、着こなしに興味を持てば持つほど、スーツを着こなすための伝統的なルールや、シャツ、タイ、シューズとの合わせ方の作法といった、いくつもの決まり事があることを知るから。また、それらに精通することが、スーツを着こなすためには遠回りなようで一番の近道だ。

とはいえ、一見抑制的で格式張ったように感じられるスーツの世界においても、遊び心のある着こなしは存在し、時として賞賛される。むしろ、格式張っているからこそ、ルールから外れるスリルを楽しめると考えるのが洒落者の、洒落者たるゆえんだからだ。ネクタイの大剣と小剣をわざとずらして結んでみたり、スーツにオックスフォードのボタンダウンシャツを合わせてみたり。これまで編み出された数々のテクニックは枚挙に暇がない。

そんなスーツでの遊び方に、斬新な切り口を提示したブランドのひとつが、イタリア・ミラノ生まれの「エトロ」だ。「エトロ」は、インドの伝統的なカシミール紋様に起源を持つエレガントなペイズリー柄の生地で知られ、ポップなカラーや、花柄やストライプとの組み合わせなどで独創的な世界観を現前させる。

1968年にテキスタイル生産からビジネスを始動。やがて80年代にはこのペイズリーでエトロブランドでアイテムも作り、評価を高めたのち、1990年代にはメンズとウィメンズの洋服を作りはじめる。

当時、「エトロ」のクリエイティブディレクターであるキーン・エトロは、スーツ作りの技工に精通したナポリやバーリのテーラーたちと、連日、夜遅くまで服作りに明け暮れたという。そして生まれたのが、表面は抑制的に見えて、実は裏地に豪奢なテキスタイルを使用しているという、遊び心たっぷりのスーツだった。

イタリアの伝統的なスーツ作りの技術に惚れ込んだキーン・エトロは、イタリアのみですべての生地を賄うというコンセプトを実践。何年もの時間をかけて国内をくまなく訪れては、卓越した技術を持つテーラー、職人を探したという。キーン・エトロは語る。

「私が何十年にもわたって共に様々な実験的な試みを行っているテーラーたちは、この度における友人でもあると同時に、同志でもあります。私たちは決して驕ることなく、互いの向上心を刺激し合い、イタリアが誇る豊かな料理、土地、野菜畑、ダンス、歌、歓び、幸せを皆で共有しています。これこそが、私たちが思うところの、心と手のこもった真摯な製法なのです」。

斬新なテキスタイル使いという大胆な遊びが評価されるのは卓越したスーツ作りの技術があってこそ。これぞ、極上の遊びだ。

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「エトロ」の熟練技によるスーツはプーリアをはじめとする南イタリアで作られる。写真は世界遺産でもあるアルベロベッロの建物。

さらにワンランク上のスーツを求めるなら

南イタリア・プーリア州で、イタリアの服作りの伝統を受け継ぎ、長年にわたり熟練を重ねたテーラーがスーツを仕立てるエトロ。そのエトロは、近年ではテーラリングにより力を注いでおり、そして生まれたコレクションが「サルトリア・フェリーチェ」だ。

随所に手仕事を駆使して作られる立体的なスーツは、極めて高いフィット感という特徴を持つ。また、使用されるイタリア産の上質なファブリックによる、凡百のスーツとは一線を画す圧倒的な存在感。上質を知る男こそ、「このスーツを着てみたい」と感じるはずだ。

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テーラーのハンドメイドの仕上げによる繊細な作りが特徴。例えば肩付けを手縫いすることで、ステッチのテンションを細かく調節し、より身体にフィットさせる。スーツにおいて極めて重要な芯地の処理も手仕事だ。通常のスーツには用いない伝統的なディテールも随所に盛り込まれている。

文=青山鼓

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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