米企業に学ぶ、イノベーションを生む「セパレーション」

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「セパレーション(分割・独立または売却)」がいかにイノベーションにつながるのか。今回は米デュポンの1990年代後半以降のケースから紐解いていく。

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http://forbesjapan.com/articles/detail/11914

前回は昨今増えているセパレーション(分割・独立または売却)のトレンドから、能動的かつ前向きなハッピーセパレーションがいかにイノベーションにつながるかを述べた。今回は具体的なケースとして、米デュポンの企業行動を観察する。

デュポンは設立210年を超える伝統企業であり、火薬から始まり化学(ケミカル)、現在は総合科学(サイエンス)へとシフトしている。

図は、ケミカルからサイエンスへと舵を切った2000年前後からの買収と売却の状況である。いくつか印象的な「セパレーション」がある。ひとつは、00年代初頭のメディカル事業の切り出しだ。1991年に独メルクと合弁会社を設立し、その後98年にメルク社の持ち分を25億ドルで買い取り完全子会社化。しかし、R&D(研究開発)投資競争が規模的に難しいことがわかると、3年後の01年、米ブリストル・マイヤーズ・スクイブに78億ドルで売却。現在でも多くの企業が有望視する医療領域にもかかわらず、競合に対峙した際に世界トップクラスにはなれないと判断し、撤退すべきと売却した。

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また、高付加価値事業へのシフトを進めるなか、99年には当時売り上げの4割を上げていた石油事業を売却。04年にはデュポンを世界的企業へと押し上げ、当時の売り上げの2割強を占めていた繊維事業も売却。最近では、12年に機能性コーティング事業を投資ファンド・カーライルグループに売却。15年には、テフロン等の生産で知られる高機能化学事業を分社して独立させ、ケマーズという社名でニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場させている。

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日置圭介 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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