ごく一般的には、いわゆる「星占い」を指すことが多いようだが、占星術の専門用語としては星占いをするための、太陽系の惑星の配置を描きしるした図表を指す。謎めいた惑星や星座の記号がちりばめられた円形の図形は、いかにも神秘的な雰囲気を醸し出し、占星術の魅力を盛り上げる。
そして、この“ホロスコープ”の本来の意味は「時の見張り人」でもある。少しばかりややこしい話になるが、星占いのしくみについてお話しさせていただこう。
今の日本では、自分の「誕生星座」を知らない人はほぼ皆無。例えば僕は3月2日生まれの魚座生まれ、また1月1日生まれの人は山羊座生まれだ。
ポピュラーな誕生星座ではあるが、この誕生星座がどのようにして決められているのかを知るひととなるとぐっと少なくなる。自分が生まれた時に夜空高くに輝いていた星座が誕生星座ではないかと考える向きもあるかもしれないが、さにあらず。実は魚座生まれの人が生まれた時の空に、うお座は見えないのである。
占星術が誕生した紀元前からコペルニクスの時代まで、宇宙の中心は地球だと考えられていた。不動の地球を中心に、周囲を太陽や月、そして金星や火星といった惑星がそれぞれの周期で公転しているとされたのだ。いわゆる「天動説」(より正確には地球中心説)である。
地球から見た見かけの太陽の通り道(黄道と呼ぶ)に沿って、おひつじ座、おうし座といういわゆる星占いの12星座が並ぶ。この太陽の通り道をまるで時計の文字盤のように12分割し、それぞれのエリアを12星座の名前で呼ぶことがギリシャ時代に考案された。
勘のいい人ならもうおわかりだろう。占星術における、いわゆる「誕生星座」とは、ある人が生まれた時に地球から見て太陽がどの星座宮の方向にあったかを意味する。だから、「誕生星座」は昼間に空に昇っているるわけで、その人が生まれた実際の夜空に輝いているわけではない、というわけだ。
さて、雑誌やテレビなどの「星占い」では、太陽の大雑把な位置だけを取り出して使っているが、実際の太陽系には太陽のほかに月や水星、火星、木星、土星などいくつもの天体が回っている。正式な占星術では、これらの天体(伝統的には惑星と呼ぶ)の位置を細かく正確に計算し、それを描き込んだ「ホロスコープ」を作成して、その人だけの運命模様を星の配置に読み取ろうとする。
信じる、信じないは別にして、歴史的にはコペルニクスやガリレオ、あるいはケプラーなどルネサンスの「科学者」がこうしたホロスコープを計算し、天と地の織りなす照応のドラマを読み解こうとしてきた。ある時代まで占星術は天文学と不可分の関係にあった、いや、同じ学問の二つの側面であったといえるのである。