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2016.05.15 12:00

占星術師は「ホロスコープ」に一期一会を見る/鏡リュウジ

プトレマイオス(83年頃~168年頃)が唱えた天動説のイメージ図。彼は著書であり占星術の教科書ともいわれる『テトラビブロス』で、変化する星の位置が世界に及ぼす影響について言及している。


ところで、僕が先に「ホロスコープ」とは「時の見張り人」を語源とするといったことを覚えてくださっているだろうか。「スコープ」はむろん、「見る、観測する」であり、「ホロ」は地平線を意味した。ホロスコープのホロとはホライゾンと語源を同じくする。すなわち狭義の「ホロスコープ」とは東の地平線を、そしてここから転じてある瞬間の時間を指す天体配置図を意味するようになった、ということだ。
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僕たちの腕時計では普通、短針、長針、秒針の3本の針で時を記しているが、占星術師が用いるホロスコープでは太陽のほかに数多くの天体を「針」として刻々と移りゆく時を見つめている。概略でいって太陽は1年、月は28日、火星は2年半、木星は12年、土星は30年、冥王星は250年といったサイクルでほぼ同じ位置に戻る。

いわば、あらゆる事象が巡り巡っており、天の下に真に新しいことはないと解釈できる。しかし、これらの星の針すべてを組み合わせると、実は何万年たっても同じ配置にはならない。つまりどの瞬間もかけがえのない一期一会だ。

「いつか来た道」と「かけがえなき瞬間」という二つの時間の見方を、占星術師たちは星を記したホロスコープの中に読み取っているのである。
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鏡リュウジ◎占星術研究家、翻訳家。国際基督教大学大学院修士課程修了。占星術やユング心理学をテーマに幅広いメディアで活躍。英国占星術教会会員、京都文教大学、平安女学院大学客員教授。

文=鏡リュウジ

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