さらに、ある調査の結果では、上司と部下のコミュニケーション・スタイルが異なる場合、部下の職場に対するエンゲージメント(関与)の度合いが2~3割低下することが分かっている。
双方の間のコミュニケーションの断絶は、さまざまな形で起こり得る。その一つのケースが、「感情重視型とデータ重視型」の衝突だ。このタイプの人たちがぶつかった場合には、例えば大型プロジェクトが予定通りに進んでいるか、所属する部署の予算に問題がないか、といった簡単な会話さえ難しくなることがある。私たちはこうした問題の解決に向けて、それぞれのコミュニケーション・スタイルを理解しておく必要がある。
4つのコミュニケーション・スタイル
私たちのコミュニケーションの取り方には、主に次の4種類がある──1) 分析型、2) 直感型、3) 実務型、4) 感情型
それぞれについて、以下に簡単に説明する。
1) 分析型
信頼できるデータや実際に得られた数字を好み、こうした事実やデータをきちんと把握していない人に疑いを持つ傾向がある。明確な言葉を好み、あいまいな言い方を嫌う。
2) 直感型
物事を全体像から捉え、ずばりと要点を言うタイプ。詳細にこだわって身動きが取れない状況を嫌う。一から順序立てて説明してもらうのが苦手で、全体像を示した上で結論を言ってもらう方が受け入れやすい。
3) 実務型
プロセスを重視する。予定と物事の詳細を大切にし、綿密に練られた計画に従って行動するタイプ。取りこぼしがないよう段階を追って物事を進めたいため、それに応じたコミュニケーションの取り方を好む。
4) 感情型
感情を伝える言葉と気持ちのつながりを重視し、それらによって相手の考えを知ろうとする。本当に知りたいのは、人の「意見」ではなく「気持ち」。
相性が悪いペアと対策
あなたはどのタイプに当てはまるだろうか。そして、あなたの上司はどうだろうか。上司と部下で考えた場合、最も衝突しやすいのは、「分析(データ重視)型と感情(個人重視)型」だ。このペアは、相手の意見を聞くことすらつらいという場合もある。
次にぶつかりやすいのが「直観型と実務型」だ。直観に頼る人は、すぐに結論を得たがる。各項目について一つ一つ説明されても、延々と続く話を聞き続けることに耐えられないのだ。注意力が長続きせず、忍耐力がないと思われる人も多い。
こうした衝突を回避するために重要なのは、まずは部下が、上司が好むタイプの話し方を習得することだ。もし詳細を説明してもボスがいら立ってきちんと聞いてくれないなら、最初に結論を伝えるようにしてみよう。その後の説明も、できる限り簡潔にまとめることだ。
上司が分析型でデータに頼る人なら、あなたも数字を示して話すようにすればよい。「このプロジェクトは予定を3日前倒しで進行中です。完了までに克服すべき5つのポイントのうち、すでに4つをクリアしました」などのように話してみよう。どちらのケースも、最初は自分の話し方を変えることに違和感を持つだろうが、外国語で話す練習をするよりは簡単なはずだ。
練習すること、慎重に行うこと、そしてあなたの話を聞いているときの上司の反応を注意深くみていくことで、関係を改善することができるだろう。状況が大きく好転すれば、きっと驚くような結果が得られるに違いない。