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2016.05.12

マイナス金利が住宅市場に効かない2つの理由[日本の不動産最前線 第1回]

Takamex / Shutterstock.com


加えて「供給過剰」。OECD(経済協力開発機構)に加盟できるレベルの、いわゆる普通の国の多くが「住宅総量目安」「住宅供給目標」といった計画を持っている。総世帯数、総住宅数や住宅の質の現状を踏まえ、今後10年間にどの程度の新築建設が適切かといった目安である。この目安に合わせて税制や金融をコントロールしていく。

世帯数や住宅数を勘案すると我が国の適正な新築着工数は年45万程度と見られるが(この点については次回詳述する)、年90万戸程度である。実は空き家の増加の本質的な原因はここにあるのだが、迷惑空き家に対応する、いわゆる「空き家対策法」は施行されたものの、空き家増加の根本原因にはまだ踏み込んだ政策は打たれていない。我が国の空き家率は2013年時点で13.5%、空き家数はすでに820万戸(総務省・2013年時点)に達し、いまなお空き家は年々増加している。2030年には空き家率が30%を超えるとのシンクタンクの試算もある。

さてこうした論調はアベノミクスや東京五輪開催、またそれに伴うインバウンド需要でホテル不足が顕在化していることや、東京都心で商業地の開発ラッシュが起こっていること、都心の高額なタワーマンションや富裕層の相続税対策、外国人需要などで売れ行き好調で、むしろバブルとの声もささやかれるといった、巷によく聞くアナウンスとは随分温度の異なる論調と映っただろうか?

実は住宅市場で好調なのは、都心の超一等地や郊外・地方都市の駅近・駅前物件などほんの一部であり、それ以外の大半は何ら恩恵をこうむっていない。物件種別でいえばマンションだけが価格上昇、それ以外の住宅地・戸建住宅はむしろ下落トレンドにある。

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※[グラフ1]不動産価格指数(国土交通省)より長嶋修事務所作成

さらに見ていくと首都圏では、2012年の政権交代以降、価格上昇を続けたのは都心3区(千代田区中央区・港区)、せいぜい5区(加えて新宿区・渋谷区)くらいまでである。

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※[グラフ2]月例マーケットウォッチ(東日本不動産流通機構)より長嶋修事務所作成

では住宅市場はこのあと、はたしてどのような動きを見せるだろうか。次回以降更に詳しく市場を検証する。

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