米在住ITコンサルタントが警鐘「新しいテクノロジーに対する保守性が、日本企業を弱体化させる」

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谷本:それは、日本でフェイスブックのような企業が生まれにくい土壌であることにも繋がる気がします。

野口:そうですね。日本では、子どもの頃から“いかにダウンサイドのリスクを減らすか”という発想を植えつけられてしまう傾向があります。一方、アメリカは“いかにしてアップサイドのポテンシャルを最大にするか”という発想が根本にあるんです。アップサイドのポテンシャルが最大になるのであれば、多少のリスクは厭わない。ダウンサイドのリスク回避ばかり考えている日本とは、ここが大きく違うんです。

日本とアメリカの取締役会も、議題が全く違います。私は両方の国で取締役会に出ているのでよくわかりますが、日本では過去の数字の結果のレビューをするのが主で、戦略に関するオープンなディスカッションは、ほとんどありません。アメリカでの取締役会では、他の企業はどのようにITを使って自社の競争力を高めているのかを分析して、新しいテクノロジーのどのような部分に注目すべきか検討する。つまり、企業の成長戦略について社内外取締役と執行役員達の間で熱のこもった議論がなされます。思考の向きが真逆なんです。

アメリカが持つ““アップサイドのポテンシャルを如何にして最大にするか”という思考方法”は、新しいテクノロジーを積極的に取り入れて、如何にして自社のコアビジネスの競争力を高めるか、という思考方法に繋がりますから、今のように世の中の変化が激しい時代にはアメリカのような考え方の方が圧倒的に有利でしょうね。

谷本:世界で注目されているテクノロジーのひとつに、ドローンがあります。熊本震災の断層の亀裂の撮影にも使われるなど、日本は、ドローンの欠点、問題点を考慮しつつも積極的に活用しようという向きがあります。野口さんは、ドローンの可能性についてどのようにお考えですか?

野口:可能性はとても高いと見ていますよ。アメリカでの話ですが、FAA=米連邦航空局がドローンの規制を決める前から、違法を承知で、映画や商業用の撮影に使われていますし、農業での使用も、かなり期待が持たれています。軍事使用は、ご存知の通りです。

ドローンの欠点の一つは、バッテリーの持ち時間ですが、先日は、有線のドローンを開発したところがあります。大統領就任式やロックコンサートのようなイベントのTV生中継用に、聴衆の視界を大きく遮る仮設やぐらを立てる代わりに、有線ドローンを使えば、2〜3時間の中継は簡単にできますから。FAAの規制がはっきりすれば、これからも、色々なドローンが開発され、新しい活用方法が生まれてくることでしょう。

谷本:どうもありがとうございました。

野口芳延◎インタービジネス 社長兼CEO。アメリカにおいて35年間ハイテク企業数社の経営をすると同時に、IT分野における国際ビジネスや経営層向けのコンサルテーションの経験も持つ。インタービジネスの他にも、Auriq Systems、Mobile Gate、Fast Forward Event、Wrethink, Cornerstone on Demandおよび、Sonix、Co-Meeting、Unirita、住友商事、Soliton Systems,等、米国および日本でのハイテック企業の社外取締役/Advisory Board Member/アドバイザーとして活動。

構成=吉田彩乃 写真=藤井さおり

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