米在住ITコンサルタントが警鐘「新しいテクノロジーに対する保守性が、日本企業を弱体化させる」

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谷本:フェイスブック・メッセンジャーと企業のアプリケーションとのやり取りは、どうなっているのですか?

野口:ボットという小さなソフトウェアが行います。チャット用のボット、チャットボットには、クラウド上でAIを使うこともでき、B2C、C2B間のやり取りの精度を上げることもできるようになります。

このように「Bots for Messenger」を使えば、見込み顧客の質問への回答、カスタマー・サポート、eコマースの手続き説明など、顧客と企業とのリアルタイム・コミュニケーションが可能になります。今回の「メッセンジャー・プラットフォーム」の発表にあたり、Walmart, KLM Airline, Hyatt Hotel, NBA, MLB, Uber, Lyft等の大手企業・団体約30社が既にベータ・ユーザーとして名を連ねていました。

現時点では、全世界月間9億人もの人がフェイスブック・メッセンジャーを利用しているといわれています。今回、フェイスブックはこのメッセンジャーとのインターフェースをオープンにしましたので、世界中の開発者が、フェイスブック・メッセンジャー用の色々なボットの開発に着手してくることでしょう。

今回の発表は、フェイスブックの新たな取り組みとして、国内外から非常に注目を集め、実際、「2016年はチャットボットの年になる」とまでいわれています。このような技術開発が、アメリカの各方面でどんどんと早いスピードで進んでいます。

谷本:日本経済新聞社がエバーノート(Evernote)との資本業務提携を発表し、日経電子版との連携が始まっていますが、まだ十二分には使われていないという声も聞かれます。日本ではまだまだ企業内でコンシューマー向けのツールを使うことに抵抗があるように見受けられるのですが、アメリカではどうなのでしょうか。

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野口:日本のマスコミでは話題になっているが、大企業ではまだあまり浸透していない、IoTやフィンテックなどの新しいテクノロジーを、アメリカの大手企業が積極的に取り入れて、自社のコアビジネスの競争力を高めようとするトレンドが顕著になってきています。日本企業は、ITの新しいテクノロジーの採用に関して、あまりにも保守的過ぎます。そして、残念ながら、それが日本企業の国際競争力を弱める結果となっています。

それから、企業が導入するかどうかという問題もありますが、個人のメンタリティによるところも大きいですよね。たとえば、日本の企業で、若い社員が顧客とのやりとりにLINEやメッセンジャーを使うとします。それに対して、上司がSNSの使用を禁止したら、若い社員は素直に従いますよね。日本人はおおむね規則順守ですから。

しかし、アメリカは違う。上司に仕事上でのSNSの使用を禁じられたら、その社員は「禁止するなら、代替物を導入してほしい」と言うんです。要求したにもかかわらず新しいツールが導入されなかったら、上司の忠告を無視して、好き勝手に自分の使いやすいツールでビジネスを続けてしまうんです。すると、企業側は苦肉の策として、新しいツールを開発するか、なんらかのエンタープライズ・SNSサービスを導入せざるを得ないようになるんですね。
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構成=吉田彩乃 写真=藤井さおり

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