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放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


第一映劇も、一時期は存続の危機にあったが、最近、天草市が年間数百万円を補助し、市民の観たい映画をアンケートで選定して第一映劇で上映する「天草市市民シアター」という施策をスタートさせたという。まだまだ安心はできないけれど、市民と天草市が一丸となってこの小さな映画館を守ってもらえたらと心から願う。それは「映画館で映画を観る幸せ」を守ることでもあるのだから。

僕自身も故郷の小さな映画館を見守りたいという気持ちがあって、自分が携わる企画では幾度となく紹介してきた。一度はテレビ番組で、脚本家の倉本聰さんを連れていったこともある。

崎津、御所浦などを廻ったあと、第一映劇の近くまで行き、「僕、子どものころ、ここで初めて映画を観たんです」「おお、いい劇場ですねえ」「ちょっと中、覗いてみます?」ということで中に入っていくと、倉本さんが脚本を書いた高倉健さん主演映画『駅 STATION』が上映されているというサプライズ!エンドロールまで観客の皆さんと一緒に観たあと、ご挨拶していただこうと思ったのだが、倉本さんは20余年ぶりの映画に感極まったのか涙ぐまれ、僕もとてもじんとしてしまった。ミニシアターはそんなほっこりとしたサプライズがよく似合う場所なのだ。

昨年は「天草映画祭2015」で、僕が企画・脚本・監督をした熊本県観光PRフィルム『くまもとで、まってる。』と『ふるさとで、ずっと。』の上映もした。前者は熊本に暮らす無名の5組の家族の、なんでもない日常を映し出した11年のドキュメントショートフィルムで、「人が待つ」という行為をストーリーの軸にしており、「あなたを熊本で待っているよ」というオチになっている。

これが非常に好評だったため、続編をつくった。それが後者で4年後の5組の家族をくまモンが訪ね、四季折々の風景とともに紹介している。最終ロケはくまモンと120人を超える市民エキストラが第一映劇に集結して撮影したのだが、これも柿久夫妻には内緒にしており、サプライズをとても喜んでもらえた。

この2作品は「世界一小さな劇場だけど、世界一大きなネットワークになるかもしれない」というコンセプトで、DVDセット(ポスターやパンフレット、チケット、くまモントロフィー付き!)を1万円、1,000人限定で購入してもらい、ミニ映画館「くまモン座」の支配人として自主上映会を開いてもらうことにした。単純に言うと、「映画館ごっこ」をしたかったのだ。

昭和40年代、カラーテレビが家に来たときに近所の人を「見に来ない?」と茶の間に誘ったように、その2本の上映を皮切りに、お茶の間映画館が週末の定番になっていったら、と。お母さんはポテトサラダをつくり、お父さんがビールを用意して、近所の人たちを集めて、「今日は伊丹十三の『タンポポ』をお見せしましょう」なんてね。そんなことが各地で起こったら、なんて素敵なことだろう。DVDはありがたいことに発売1年で、日本国内だけでなく、北京の学生さんや香港のくまモンファンの皆さんにも届いているそうだ。くまモン座が「誰かと一緒に観る幸せ」を取り戻すきっかけとなり、またミニシアターが賑わったら、こんなに嬉しいことはないのだけれど。

イラストレーション=サイトウユウスケ

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