ビジネス

2016.05.24

コマツ、SBプレイヤーズ 課題山積の地方を救う「大企業」の知恵

ICT建機のショベルカーが残土を台形にする。若い女性でも法面(のりめん)形成を熟練なみに実質12時間でできた。ブルドーザーの排土板(ブレード)を上げ下げして凸凹地面を平面化する作業も、自動制御が行う。(photograph by Peter Stember)


コマツが考えた労働力不足の解決方法は、「工事現場そのもの」を変えることだった。大胆な発想の原点は、まず自前主義の技術開発を、外部との連携に切り替えたことにある。

「社長に就任する前、アメリカやイスラエルですごい技術を見て、一緒にやりたいと思って帰国しても、開発部門のトップは目の前のプロジェクトを山ほど抱えて身動きがとれない。そこで社長に就任すると直ちに開発部門のトップをCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)に任命して、将来のために面白い技術を見つけて、コマツの技術を融合させようと指示しました」

CTOが飛んだのはシリコンバレーだった。そこでこう提案された。

「素早い測量なら、空からでしょう」

空からドローンで現場を計測し、ICT建機につけたステレオカメラや3Dレーザースキャナの3つから計測した工事現場のデータを、瞬時に地形データに落とし込む。すると、工事現場が立体的な3D画面になる。工事現場の「見える化」だ。

「コムコネクト」というクラウド型機械で、データを最終設計図と照合。すると、あとどのくらいの作業や機械が必要かがわかり、さらにコムコネクトが高度な解析を行って、工事の段取りの提案まで行うのだ。

また、油圧ショベルやブルドーザーの操縦技術の習得には4〜5年はかかるといわれるが、知能化されたICT建機を使えば、経験の浅い若い女性でも3日で習得できる。建機は自動制御されているので、今までのように建機のそばに作業員が立ち、目視する必要もなくなった。こうして工期が大幅に短縮され、少人数での作業を可能にしたのだ。「スマートコンストラクション」と呼ばれる未来型工事は、現在、日本各地、1,000カ所以上の現場で使われている。

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[上]ドローンで高精度測量した写真を点群データにしたもの。すべての情報をICTでつなげ、施工計画を正確に策定する。
[下]施工データのシミュレーション。

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藤吉雅春 = 文 ピーター・ステンバー = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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