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川村雄介の飛耳長目


興味深い特徴は、飛騨高山地方を訪れる外国人の主たる来訪目的が買い物でも食べ物でもない点である。温泉・保養目的が2割強、文化・歴史(町並み)探索と旧跡訪問がそれぞれ17%あまりを占め、この3つが群を抜いている。

訪日外国人旅行者数は昨年1,973万人に達し、その消費額は3兆4,771億円にもなった。けん引したのが中国人で1兆4,174億円を消費してくれた。まさに爆買いだ。ちなみに米国人の買い物額は1,814億円である。日本中が主に中国人旅行者を念頭に置いた免税店対応などを進めるのもうなずける。

だが、爆買い一本足打法では危うい。中国人が押し寄せる長崎県。昨年、長崎に寄港した観光クルーズ船は180隻と2年前の4倍近くに「爆増」した。さぞや地元の商店街は潤っていると思いきや、「大した効果はないのですよ。せいぜい薬か廉価なお土産くらいでしてね」。中心商店街の店主が愚痴る。高価なブランド品などは東京や関西に飛行機で訪れる中国人が買いあさり、船旅の観光客は1〜2泊でテーマパークや名所に寄って大きな買い物はせずに帰ってしまうのだそうだ。

それにいつまでも右肩上がりで爆買いが伸びていくとも思えない。より長期間にサステナブルな対応が必要になると痛感する。

観光統計を子細に見ると面白い点に気づく。訪日外国人の国別一人当たり消費項目である。中国人は断トツに買い物で16万円を超える。欧米人は3万円程度だ。ところが宿泊費・旅費は正反対で、中国人の7万円に対して欧米人は12万円近い。欧米人は長期滞在をしながら、じっくり日本の歴史・伝統文化体験を楽しんでいるのである。

日本訪問への満足度調査も示唆的だ。「大変満足」した中国人は44%、韓国人は25%に過ぎないが、英国人、フランス人、イタリア人、ロシア人の8割以上が大変満足したと答えている。米国人も79.5%とほぼ8割だ。

宿泊・滞在型インバウンド体制の整備が急がれるのももっともである。国家戦略特区に民間の空き家などを活用する民泊事業の拡充に期待する。良質な長期滞在で日本の文化や芸能、イベントを存分に楽しんでもらいたいものだ。持続的な雇用にも有効だろう。

夜も深まる高山の老舗料亭の玄関口。若女将がたおやかに見送りに出てくれる。彼女の差し出す番傘にハラハラと牡丹雪が舞い落ちてきた。

文 =川村雄介

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