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2016.05.10

フィンテックの前に「銀行カルチャー」の変革を

Gajus / shutterstock

Fintech(フィンテック)という言葉をよく聞くようになった。一部にはIoTやビッグデータのようにシリコンバレーお得意のマーケティング用のバズワードという人も少なくない。確かにフィンテックというと新鮮に聞こえるが、金融工学という分野は1980年代からすでに存在しており特段新しい考え方ではない。決定的に違うのはコンピューターの処理能力が飛躍的に進化したことである。例えばフィンテックで革命的だと言われるテクノロジー、ブロックチェーンは膨大な量の計算を必要とするため現在の演算処理能力をもって初めて実現性が高まったといえる。

フィンテックはすでに、P2P融資(個人間融資)、決済、PFM(個人資産管理)、ロボアドバイザーなど各分野で大きなビジネスとなりつつあり、それはベンチャー企業による産業革命という位置づけになっている。問題は銀行との競合なのかあるいは協調なのかの銀行側の選択である。ここには金融規制、雇用維持、金融システムへの影響など先の読みづらい要素が多いが、米国銀行はAPIを開放し、むしろベンチャー技術を取り込む姿勢に傾きつつある。

ところで先日、大手銀行系カード会社からカード使用に際し年収証明の提出を求められた。気を利かせて税務署の捺印のある直近の修正確定申告書を提出したところ、「受け付けられません」と差し戻された。当然年収額は問題ではない。必要書類リストにない「修正申告書」ではなく、リストに掲げてある「確定申告書」が必要とのこと。ちょっとインターネットを検索すれば私の素性はわかるだろうに。日本の銀行はフィンテックをどのように取り組むかで躍起になっているが、まず変えなければいけないのはカルチャーなのかもしれない。

高野 真 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.22 2016年5月号(2016/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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