生命保険大手メットライフの調査によると、米国では年間26億ドル(約2,832億円)以上、高齢者が経済的虐待で失っているという。その被害から守る活動をしているElder Financial Protection Networkは、さらに多い29億ドルと見積っている。
米紙ニューヨークタイムズの記事によれば、加害者は信頼できる友人のふりをして、退職者にとって分かりにくいお金の問題について“手助け”を行う。そして最終的には、貯金をごっそりとだまし取るのだ。同紙は「毎年、米国の高齢者500万人が、程度の差こそあれ、介護士や友人、家族や財務顧問に騙されている」と推定。高齢者が増えつづける中、ますます多くの退職者がそうした搾取に遭う可能性があるとしている。
またメットライフの調査では「55%のケースにおいて、加害者は家族あるいは介護士」であるとの結果が示されている。今後さらに高齢化が進み、テクノロジーが進化していくと、経済的虐待の機会が劇的に増える可能性が高いとの見方だ。
気づきにくい卑劣な手口とは?
大部分のケースにおいて、高齢者の経済的虐待は計画的で長期にわたって行われる。その手口が露骨でないことも多く、見つけるのが難しい。よくあるのは、加害者が被害者から権限を委任され、請求書の支払いや投資を代行しているフリをするというものだ。ずる賢い加害者らは、それらを行いながら少しずつ金を吸い取っていく。
こうしたケースでは、被害者が気づかないまま長期にわたって搾取が行われていることが多く、訴追も難しい。また、加害者が親族や友人である場合にはさらに難しい。高齢者は優しすぎて、彼らを追及できないのだ。
虐待の兆候を見逃すな
高齢者の経済的虐待の「典型的な」犠牲者は70~89歳。白人の女性で、病弱、認知障害があり、人を信じやすく、孤独である場合が多い。メットライフの調査によれば、被害は金銭の損失にとどまらず、被害者はその後も信用力に問題を抱えたり、体調を崩したり、鬱になったり自立心を失ってしまったりと、長期にわたって影響を受けることが多い。また、裕福かつ有名なタイプも被害者になりやすい。
全米退職者協会は「不景気により、多くの“成人した子どもたち”が、高齢の親の経済的支援に頼るようになっている。それがあからさまな経済的虐待に変わる危険がある」としている。