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2016.05.09 10:00

日本のフロンティアは「限界」の先にある

佐渡島から望む日本海(IZO/shutterstock)

佐渡島から望む日本海(IZO/shutterstock)

人口減少、高齢化。「消滅」がささやかれる限界の先に、世界に先駆けるアイデアが生まれる可能性がある。
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2050年までに9,000万人にまで減少するといわれる日本の人口。総務省の人口推計によると、高齢化率(65歳以上の高齢者の割合)全国1位の秋田県(33.6%)の人口約100万人は、50年までにはほぼ半減すると見られている。

一極集中が進む東京圏でも、他人ごとではない。人口の減少率は05〜50年で10.4%に留まるものの、高齢者人口は、05年の599万人から50年には1,122万人とほぼ倍増(国土審議会政策部会長期展望委員会、11年)。独居老人世帯は3倍に増え、不足する医療施設や介護人員など、課題は山積みだ。

しかし、人口減少と高齢化にとらわれる自治体が多いのではないかと指摘するのが、地域を基盤としたビジネスを支援するNPO法人コミュニティビジネスサポートセンター代表理事の永沢映だ。「東京23区や、比較的数字に恵まれている都市近郊を含め、どの地域も20〜30代の女性を呼び寄せる子育て戦略をかかげ、人口増を目標にしています」。すべての自治体の計画の推計を合わせると30年後には、日本の人口は2億人を超えることになるという。あまりに非現実的な数字だ。
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地方・都市圏問わず、国内の資源は限られている。世界で新たなテクノロジーが次々と生まれ、産業構造が大きく変わろうとするなか、人・企業誘致のために大規模な資金を集中投下する手法はもはや通用しない。それぞれの地域が強みと弱みを知り、地域全体が参加して小規模・分散的にアイデアを醸成していく仕組みこそが、今、求められている。

「無駄を省く、外貨を稼ぐ、それを循環させる。その3つが、地域には必要なのです」。そうすれば豊かさを享受できるはず、と永沢は語る。そして、グローバルな視点と長期的な時間軸で見た場合、それは東京とて例外ではないのだ。

データの「見える化」で強みを知る

イギリスで00年ごろから着目されている地域経済理論に「地域内乗数効果」というものがある。これは、地域における公共投資の総額のみにとらわれすぎたことの反省から生まれた考え方だ。同じ100万円を投資しても、循環率が80%の地域(20万円が域外に流出)と、60%の地域(40万円が域外に流出)では、循環を繰り返すにつれ、需要の創出に倍以上の差が出る。

内閣官房が15年にローンチした地域経済分析システム(RESAS)では、全国約1,700の市町村の地域経済循環図を見ることができる。例えば、地場産業がさかんな日本海側の工業都市富山県富山市は116%と高い循環率を誇る[関連写真参照]。投資すれば、リターンが大きい。これは金額の大小にとらわれない新しい「豊かさ」の指標といえる。
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文=岩坪文子

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