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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

illustration by Takashi Kuwahara

ゆったりとしたジャズが聞こえてくるような、ポップで洒落っ気たっぷりのイラストで知られるイラストレーター桑原節さん。雑誌や広告を舞台に、ファッション、お酒やフードなどのライフスタイルからビジネスに至るまで幅広く活躍する桑原さんに、「男のスーツ」をテーマに話を聞いた。

「いまのスーツのあり方」というものを考えると、昔といまとではだいぶ変わってきたように感じています。個人的な思い出ですが、1980年にロンドンのテーラーブランドに取材で訪れたときのことからお話ししましょう。僕が訪れたそのテーラーは創業から200年を超す老舗なのですが、もともと英国王室や、上流階級の子息が軍隊に入るときにオーダーメイドで制服を仕立てるというような、歴史と格式のあるお店でした。

でも、若かった僕は、イタリアのブランドのスーツを着て行ってしまったのです。まわりの英国紳士たちがみなブリティッシュスタイルでしっかり装うなかで、僕ひとりがまるで違う佇まい。とても居心地の悪い思いをしました(笑)。その時、英国の人々にとってスーツを着るということは、単に服を着るということではなく、伝統のうえに生き続けていることの表現であることを知ったのです。

でも、いまの時代、英国の人もイタリアのスーツを綺麗に着こなしますし、クラシックな英国紳士ばかりというわけではないように思います。それは日本の若い男性たちを見ていても同じで、街を歩いていると、とても上手にスーツを着たスタイリッシュな方をよく目にします。

彼らのスーツ姿を見ていると、古い形での、伝統を守るスーツの着かたということから一歩進んだ、シックなものに価値を取り戻そうとする意思のようなものが感じられます。ただのファッションではなく、インテリジェンスとして、意図的にスーツを着ているのだろうなと思うんですよ。

日本では、スーツがビジネスマンの服装というイメージが強かったことの反動なのか、若くてスーツが好きな方がモード系に走りがちになる傾向があったように思います。モード系のブランドはトレンドとともに変化していきますから、その結果ものすごい勢いでスーツが消費されていき、着こなしの深みということはなかなか見えにくかった。それでも、最近では様子が変わり、その人に似合う、きちんと身体にフィットしているスーツ姿の方が多くなってきたし、彼らが歩く東京などの、洗練された都市の街並みによく似合っていると思います。

「スーツ姿はすなわち保守的ではない」と、変化してきたと言えるのかもしれません。日本において成功をおさめたビジネスマンほど、フォーマルなシーンにふさわしい装いのなかで、とてもこなれたスーツの着こなしをされている印象があります。政治家のスーツ姿は、あいも変わらずセンスが悪いままですが。それでも、見られる意識の高い方も増えて、全体的なレベルは上がってきたと思います。

文=青山鼓

 

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