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2016.05.02

「人工知能に敗れた囲碁棋士」は他人ごとではない

グーグルの人工知能「AlphaGo」と対局する囲碁棋士のイ・セドル九段 (Photo by Google via Getty Images)

チェス、将棋、そして囲碁も-。人工知能(AI)がついに人間に勝利した。AIが世の中に普及する未来を見据えて、我々はどのような対応策をとるべきなのか。

米グーグルの開発した「AlphaGo」という人工知能(AI)を使った囲碁のソフトが、世界の最高レベルの棋士を破ったことが話題になっている。イ・セドル棋士は一矢を報いて、3月15日現在1勝3敗であるが、すでに負け越しは決定している。プロ棋士の解説を見る限り、もうすでにAlphaGoは圧倒的な力を持ち、超人的な力を持っていると言われている。

着手の選択肢の数は、チェスが10の120乗、将棋が10の220乗に対して、囲碁は10の360乗も可能性があるという。チェスでは、米IBMの「Deep Blue」というソフトがチェスの名人にすでに勝利を収めている。将棋の世界でも、電脳戦でプロ棋士を凌駕する強さを見せた。電脳戦で使われた中で最強クラスのソフトはHEROZが作ったPonanza(ポナンザ)だ。

HEROZには個人で投資をしており、将来性については強く期待をしている。IBMのDeep Blueは、同社のWatsonという市販のAIシステムへと変化し、現在はそれで莫大な収益を上げ始めている。AIは高度な意思決定ができるため、すでに様々な分野で応用されている。同様に、チェスよりも選択肢の数が多いHEROZの将棋ソフトが応用されて、優れたAIシステムへと変化をすることを期待している。

実際にHEROZは、任天堂のポケモンのキャラクターを使った対戦ゲームの開発を行い、4月にもサービスローンチの予定である。さらに、HEROZは大手の証券会社、メガバンクなどと組んで、マクロの経済予想や株価予想、消費者金融などの与信管理、電子商取引企業の購買履歴やリコメンド機能などのサービスを展開しつつあり、今後の展開に期待をしている。

AlphaGoの衝撃は、将棋よりさらに難易度の高いゲームで、それもあと10年はプロ棋士に勝てないだろうという予測を覆し、世界最高水準のプロ棋士を破ったことにある。このAlphaGoのシステムが汎用性を持ったAIシステムとして利用されていくのはほぼ間違いなく、IBMのWatsonを超えるAIシステムになっていくだろう。

AIシステムの応用範囲は非常に広い。金融取引やマクロ経済の予測、様々な判断を伴う経営上の意思決定のサポート、特に販売予測などには有効だと言われている。さらには戦争などの戦略立案などにも使われるようになるのは間違いない。

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藤野英人 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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