建設業界をデジタル化する女性起業家ペア 170万ドルの資金調達 

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24歳の2人の女性、マロリー・ブロディとローレン・レイクが生んだスタートアップ企業「Bridgit」が4月中旬、シードラウンドで170万ドル(約1億8000万円)を調達した。Bridgitは、建設業界のデジタル化を進めるスタートアップとして注目を浴びている。

カナダのウェスタンオンタリオ大学の同級生だったブロディとレイクは、“クレーン・ハンティング”と称して、朝早く起きては授業の前に、大規模な工事現場のあるオンタリオ州南西部に出かけた。そこで、工事現場の建設作業員や現場監督、下請け業者などに、仕事で困っていることや妨げになっていることはないか話を聞いた。

8ヶ月以上の調査の結果、この業界では仕事の伝達手段が、いまだにおそろしくアナログであることがわかった。現場の作業員は、付箋紙に書いてあるToDoリストをチェックし、壁に書いてある走り書きの工程表に目を凝らしていた。作業毎に資料や表を分けて管理していることが多く、メールや電話で頼まれてから、それぞれ必要なものを下請け業者に送っていたのだ。改善する余地はあり余るほどにあった。

アナログな工程管理をデジタル化する

完成が近づいた工事現場では、設計者が検査をし、契約通りに行われていない部分や未完成の部分をリストアップした「パンチリスト」というものがつくられる。パンチリストに載っている工事がすべて終わると、最終的な支払いがされる仕組みだ。

「現場ではかなりたくさんの作業が同時並行していて、間違いもたくさんあります。石膏ボードがあるべき場所から15センチずれていたらやり直さなければならないし、タイルが割れていることもあります」とブロディは言う。Bridgitは、このパンチリストの作業効率を上げるために、Webサイトとモバイルサイトでデジタルのパンチリストのプラットフォームを提供した。

Bridgitは2014年の創業以来、マイアミでコンドミニアムを建設する大企業などを含む100以上の会社と契約した。シアトルの会社Compass Constructionでは、Bridgitのプラットフォームを使った18のプロジェクトが進行中だ。また、Googleの女性の起業家のための初めてのデモデイで、40カ国450の参加者の中から、このイベントでプレゼンができる最終グループの11組にも選ばれた。

ブロディもレイクも、鉄鋼や建設、不動産業などを生業とする家族の元で育ち、ブロディは大学でアントレプレナーシップを、レイクは土木構造学を学んだ。それでも、建設業のためのテック系スタートアップを経営していると言うと、いぶかしげな目で見られることもあった。

2人は、“クレーン・ハンティング”に出かけていた大学時代に、うら若き乙女がピックアップトラックから出てきた時の建設作業員たちの反応が今でも忘れられない。「私たちが女だから驚いていたのではなく、自分たちの日々の生活を助けてくれる人が現れたことに驚いていたんです。みんなとてもオープンで、私たちに何でも話してくれました」。

Bridgitは、今回の調達資金をアメリカの顧客獲得や、エンジニアや営業の補充などに使う予定だ。しかし、カナダの地元キッチナー・ウォータールー地域を離れるつもりはない。顧客の割合は、女性よりも男性の方がかなり多いが、自社のスタッフはエンジニアを含め半数以上は女性にするよう心がけている。あくまでも初心を忘れずに、2人はこれからも我が道を行くつもりだ。

編集=的野裕子

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