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2016.05.04

中国の「アダルトグッズ王」46歳が歩んだ道のり 

eprom / Shutterstock

ウー・ジェンワンは1994年、中国南東部の温州市でアダルトグッズショップをオープンした。現地の人達はそこで初めてバイブレーターやダッチワイフを目にしたはずだ。当時の中国は今より保守的で、中国人の初体験の平均年齢は米国より5歳遅い22.4歳だった。

「この20年で中国人もセックスに対してだいぶオープンになった。アダルトグッズのユーザーは年に60%のペースで増えている」とウー・ジェンワンの息子、ウー・ウェイ(呉偉)は語った。

ウーはアダルトグッズやコンドーム、コスチューム、潤滑剤などを生産するLover Health Science and Technology(愛侶健康科技)を経営する。中国のセックス関連グッズのリーディング企業であるLoverは2002年、「世界の性メーカートップ10」にもランク入りした。中国では市場をほぼ独占しており、ウーは中国メディアに“アダルトグッズ王”と形容される。ウーはインターネットの波に乗って事業を成功させた。

Loverがオンラインストアを開設する前の2005年、同社製品の国内販売比率は10%以下だったが、今では15%前後に伸びた。また、インターネットは売り上げに貢献しただけでなく、ユーザーが使用感を大っぴらに語るプラットフォームにもなった。

「バイブレーターを使ったのは初めてだったけど、何度もオーガズムを得られた。元彼とするよりずっと良かった」。ある女性ユーザーはアリババが運営するオンラインモール「T-mall(天猫)」にレビューを書き込んだ。実生活でセックスを率直に語るのは、中国ではまだタブーとなっている。

「中国のユダヤ人」の異名をとる温州商人

ウーは、「私の職業を知ると、みんな『謎の業界ですね』と驚く」と語る。浙江省温州生まれ、46歳のウーは、社会主義国の中国にあって民営セクターの申し子のような存在と言える。ウーと彼の父は商売上手で知られ、「中国のユダヤ人」とも呼ばれる温州商人の典型だ。大胆かつ柔軟で、儲けるためなら何でもやる。

ウーの父親、ジェンワンがセックス業界について知ったのは、1994年だ。彼は雑誌で中国のアダルトグッズショップの記事を読み、20代だった息子2人を連れてすぐに北京に見に行った。彼らはそれが成長を約束された産業だと確信すると同時に、北京の店で売られていた製品のほとんどが高価な輸入品だと知った。それからほどなく、彼らは温州で自身の店舗と工場を立ち上げた。

Loverの店舗は1990年代後半には20以上に増えた。当時の中国ではEコマースは普及しておらず、アリババも小さなスタートアップに過ぎなかった。ビジネスのあらゆるルールを変えたオンラインモール「タオバオ(淘宝)」が登場するのは2003年のことだ。

当時、国内マーケットを開拓するのは非常に難しく、Loverの儲けも大きくなかった。「アダルトショップを目にした人々はちょっと困惑していた」とウーは振り返る。

2000年に事業を引き継いだウーは、海外展開に向けて2つの手を打った。まず2000年~2003年にかけて日本企業と提携し、2012年には米国アダルト3大ブランドの1つであるTopco Salesを買収した。

海外展開の過程で、ウーは性の開放度について中国と他国とのギャップを感じるという。「海外では顧客の80%が女性だが、中国では女性比率は半分だ。中国人女性はもしかしたら、男性パートナーにアダルトグッズを買ってもらっているのかもしれない」

編集=上田裕資

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