ニーズを察知する、客室の整え方について考える、ホテルの運営はどうあるべきか検討する──サービスに関連するこうした問題は、現在も変わらず重要な点だ。変わったことがあるとすれば、私たちに与えられた機会が増えたということだと思う。形式的な仕事の一部はテクノロジーに頼ることができるようになったからだ。
例えば、相変わらずクレジットカードを預かる必要も、宿泊手続きの書類にサインをして頂く必要もあるが、最近ではこれらをデジタルで処理することができる。そのため我々は、お客様が到着されると同時に、個人的なリクエストがあるか尋ねることができるようになった。
─フォーシーズンズの理念は杭州でもアトランタでも、どの場所でもしっかりと従業員の間に浸透しているようだ。素晴らしいチーム作りの秘訣は?
手の内をすべて明かす訳にはいかない。ただ、一夜にして成し遂げられることではないのは確かだ。私が入社する以前から我が社には、卓越性を重視する環境を生み出すための努力をすべきだという文化があった。従業員たちがお客様により快適に過ごして頂くために必要だと考えることをマネージャーがすすんで聞き入れ、従業員らが自信をもって、しっかりと自分の仕事に打ち込める環境が重要だ。
マネージャーやリーダーたちは、従業員が日々仕事にベストを尽くせるよう、彼らを支援することに全力を注ぐ。これは我が社の「文化」だ。また、創業者であり、卓越したリーダーであるイサドア・シャープ会長の考えに基づき、我が社の行動規範には「相手に対し、自分がこうしてもらいたいと望むような対応をする」という黄金律が盛り込まれている。そして、それを組織全体で実行することとしている。
すべての従業員が、私のように30年も社内にとどまるとは思っていない。だが私たちは彼らが健全で楽しく、充実したキャリアを築くことができる機会を提供したい。特に我が社の文化を大切にし、そして成長したいという意欲を持った優秀な従業員には、機会を与えるようにしている。
そのため我が社には、生え抜きのマネージャーが多い。そして、杭州のように我が社にとってはあまり馴染みが深いとはいえなかったような土地でも、従業員たちは我が社の理念に基づいた職場環境を維持している。
もちろん、最初から適切な人材を選ぶ必要がある。この仕事を楽しむことができる人でなくてはならない。従業員の採用は、黄金律に基づく我が社の方針において、最も重要な部分を占める。