「当社の事業は来年には黒字化する見通しで、追加の資金を調達する必要はありません」
その7ヶ月後、ワインライトは、するつもりはないと断言したことを実行した。4月21日、ザ・リアルリアルは、海外事業の拡大と他社買収の可能性を視野に入れ、米Greenspring Associatesらから4000万ドル(約45億円)の資金を調達したと発表した。
ワインライトに、なぜ方針を変更したのか尋ねると「市況の悪化に備えたのです」と答え、スタートアップを取り巻く財務環境について言及した。
「現在の状況はスタートアップにとっては恐るべきものです。当社としては、現状で資金を調達する必要はありませんでしたが、向こうから申し出がありました。資金調達が出来ない会社を沢山知っているので、オファーは受け入れるのが賢明だと考えたまでです」
ワインライトが抱える恐怖は、他のeコマースの起業家らと同じだ。資金調達が厳しさを増しその状況が続けば、業界には冬が訪れると予測する人も多い。昨年はザ・リアルリアルの競合だったThreadflipとTwiceの2社が、資金不足から閉鎖に追い込まれた。
一方でザ・リアルリアルの経営は順調だと彼女は言う。2015年、同社は2億600万ドル(約230億円)の売上を記録し、今年は4億ドル(約447億円)を見込んでいる。今年度末までには黒字化し、2017年は年間を通して黒字を計上する最初の年になるとワインライトは言う。
2013年には日本に進出したが、昨年撤退
今回の資金調達後のザ・リアルリアルの評価額について、ワインライトは公表を差し控えたが、これまで同社に資金を注いだCanaan Partners、e.ventures、InterWest Partners等の大手VCは、今回のラウンドで再び同社に投資しており、調達総額は1億2000万ドル(約134億2,000万円)にのぼる。
ザ・リアルリアルはグッチやエルメス、シャネル等の正規の認可を得たラグジュアリーブランドの中古品を扱う。「この先、大きな不況に見舞われると想定しましょう。そうなれば、人々はより多くの品物を売却しようと委託するでしょうし、少しでも安く入手しようとする人も増えます。当社の経営には何の問題もないでしょう」とワインライトは語る。
ザ・リアルリアルは2013年8月に日本に進出。2年間で約30万人が利用したが、昨年9月、日本版サイトを閉じた。しかし、その後も米国外への進出は諦めていない。苦戦する競合らを尻目に、ワインライトは買収のターゲットとして既に3社を検討中だ。また、オーストラリア、イギリス、カナダ、香港といった英語圏の市場への進出と、国内事業の拡大を検討している。
今年度後半には、本社をサンフランシスコのミッション・ベイエリアからダウンタウンに移転する予定だ。