新興国で活性化するソーラー発電 電力の需要増が追い風に

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再生可能エネルギーの事業者にとって、新興国はハイリスクだが大きなリターンが見込める魅力的な市場だ。エネルギー投資会社のメルカトゥスが発表したレポートによると、メキシコや中国、インドでのプロジェクトに参加する事業者や投資家の数は増加しており、2015年には新興国における再生可能エネルギー投資額が、先進国の投資額に初めて並んだという。

太陽光発電所建設プロジェクトの平均的な規模を比較すると、南米が64MW(メガワット)、アフリカが45MWであるのに対し、北米は11MW、ヨーロッパは3MWと新興国と先進国の間で大きな差があることがわかる。西アフリカのサヘル地域よりも土地を見つけるのが困難と言われる中央アメリカですら25MWとなっている。この背景には、新興市場の開発プロジェクトが公共事業が主体であるのに対し、先進国は商業用の電力供給が主となっていることだ。

また、新興国でのプロジェクトは、投資に対するリターンが先進国よりも高いことも特徴だ。例えば、太陽光発電プロジェクトの平均リターンはアフリカが10.3%、中東が10.4%、アジアが8.4%であるのに対し、北米は6.4%となっている。ヨーロッパに至っては、開発案件の規模が小さく、投資側のインセンティブも低下していることから、財務レバレッジ効果を除外したリターンは4%に止まる。先進国では、風力発電の開発プロジェクトの方がまだ大きなリターンが期待できる。

再生可能エネルギー開発は新興国へシフト

再生可能エネルギーの開発が先進国から新興国へシフトしている要因の一つに、欧米市場の電力需要の冷え込みが挙げられる。欧米で今後建設される太陽光発電所の多くは、老朽化した火力や石炭の発電プラントに置き換わる予定だ。これに対し、新興国での電力需要は増加の一途をたどっている(2013年には、世界で12億人が電力のない生活を送っていると推計されている)。

新興国の多くは再生可能エネルギーの導入に向けて高い目標を掲げている。中国は再生可能エネルギー電力量の割合を50%に設定し、メキシコも2035年までに40%にすることを目標にしている。また、インドでは風力発電会社Suzlonが同業の5社を買収し、事業拡大を加速させている。高い目標を追求することで経済の競争力が低下すると懸念する声もあるが、これらの国々は自国に太陽光発電所システムの開発や設置を行う企業があり、産業育成につながっているのが実態だ。また中東の太陽光発電所では広大な土地が余っており、余剰電力を輸出することも可能だという。

しかし、新興市場でのビジネスにはリスクがつきものだ。汚職などの政治的リスクに加え、政府方針が変わることは日常茶飯事だ。

「開発対象の地域が分散して、テクノロジーも多岐に渡るようになるにつれてオペレーションが複雑化し、ビジネスリスクの把握が困難になってきている。ビジネスプロセスをデジタル化できたエネルギー企業が競争優位性を獲得し、2016年に最も成功することができるだろう」とメルカトゥスのハレシュ・パテルCEOは指摘する。

編集=上田裕資

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