「私がシンガポールの教育を使って日本を外から揺さぶります!」ー田村耕太郎

国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院 兼任教授 田村耕太郎氏(写真:藤井さおり)


谷本:世界に通用するリーダーを育てていくためには、何が必要だとお考えですか。

田村:世界に通用するというか、激動の21世紀を生き抜くという発想のほうがいいでしょう。人材オリンピックをやっているのではないので(笑)。私は、もう出来上がった人向けの教育とこれからの人向けの教育両方やっています。もう出来上がった人に多くを期待するのは難しいと現実的には思っていましたが、何事も遅すぎることはないので、中高年になってから、21世紀対応人材になる人もいらっしゃいます。

そういう可能性のある人には国立シンガポール大学での私のエグゼクティブプログラムに来ていただいて、世界最高の講師陣とシンガポールで議論して覚醒していただきます。おかげさまでのべ200名を超える、ファミリー企業オーナー、起業家、大企業幹部、霞が関官僚、医師、会計士、弁護士の方々が私のプログラムを修了し、世界で羽ばたいておられます。

現実的には幼児期からの教育を変えることだと思っています。私には4歳の娘がいますが、21世紀をハッピーに自信を持って生きていってもらうためにシンガポールで多様性あふれる環境で自分の頭と感性で決断をしていく教育を楽しんでもらっています。

今のシンガポールには、多様な教育のオプションがあります。世界中の高度人材が、「シンガポールで子育てしたい」と言っています。

私の娘や友人の子供が通っているインターナショナルスクールの平均像から紹介します。まず、教師の質が高いですね。英語、中国が話せるのは当たり前。キャリアチェンジして投資銀行で働き始める人もいるくらいで、つまり投資銀行や弁護士事務所にいてもおかしくない人材が教育に入っているのです。まあインターナショナルスクールの教員の待遇は日本の保育士さんや教員の方よりずっといいそうですが。

シンガポール政府もシンガポールにあるインターナショナルな教育機関も次世代のための教育投資を惜しまないんです。インターナショナルスクールといっても300億円近くかけてつくられた学校も珍しくありません。日本なら大きな大学がいくつも作れるスケールの学校もあります。

日本では保育園や幼稚園は子どもを預けるところとしか認識されていませんが、シンガポールや欧米のリーダーが幼児を通わせる場所は完全に教育の場なんです。「幼児教育こそが人生の成功を最も左右する」との研究成果を出して、シカゴ大学のジェームス・ヘックマン教授は2000年にノーベル経済学賞を受賞しましたが、私の周りの親御さんたちはこれをよく理解しています。

人生の成功がそこにあると思えば、幼児教育なんてコスパのいい投資だと思います。私の周りの親御さんが自らの幼い子供たちを通わせるシンガポールの幼児教育は、科学的なトレーニングを受けたプロの教員と彼らが作った素晴らしいカリキュラムからなっています。私自身も、子どもを通わせながら、とてもバリューがあるなと実感しています。

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谷本:具体的にはどのような教育が展開されているのでしょうか。

田村:これはインターナショナルスクールに加えて、塾も含めての話ですが、まず、これからの時代に不可欠を思われる3つの言語を習得します。英語、中国語、コーディング。英語と中国語は、先生との会話の中で覚えます。シンガポール政府もこれを推奨し、有形無形のサポートをしています。

コーディングとは、日本では、プログラミングといった方が通じやすいと思います。これから先、人間とAIそしてロボットが一緒に生活する時代が間違いなくやってきます。AIやロボットのようなテクノロジーに圧倒されることなく、自ら主体的にそういうテクノロジーを使いこなす人材に育てていかないと、いくらテクノロジーが進化しても未来は明るくならないかもしれません。
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構成=吉田彩乃 編集=谷本有香 衣装協力(谷本)=HIROKO KOSHINO PREMIER

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