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2016.04.23 07:00

VWは顧客の信頼を回復できるか? 米当局と補償で大筋合意

Alexander Koerner / Getty Images

独フォルクスワーゲン(VW)が排ガス規制を逃れるために不正なソフトウェアを搭載させていた問題で、サンフランシスコ連邦地方裁判所は4月21日、VWが約50万台のディーゼル車を買い戻し、排気管などの修理を行う計画であることを明らかにした。米政府とカリフォルニア州当局、VWの間でまとまった「大筋の」合意内容に基づく措置だという。

同社に対する500件以上の民事訴訟を担当する同連邦地裁のチャールズ・ブレイヤー判事は法廷で、VW車の所有者は同社による買い戻しまたは修理に加え、「多額の補償金」を受け取ることになると述べた。補償金は1台当たり500ドル(約55万3,000円)と報じられている。

判事はこのほか、同社に「環境にやさしい」取り組みの推進を要求。6月21日までに実現に向けた計画の詳細を提出するよう命じた。計画は市民に公開して意見を募った上で、最終的にはそれらを反映させた形で計画を策定することが求められる。

ただし、今回の大筋合意は、一連のスキャンダルの収束を意味するものではない。米司法省は刑事訴追も視野に入れた調査を継続しており、米連邦取引委員会は、ディーゼル車の広告の内容に虚偽があったとして同社を提訴している。

同社はこのほか、ドイツ国内でも当局による調査の対象となっている。さらに、問題となっている車両は世界全体でおよそ1100万台に上るという。ドイツのVW本社は4月28日に通期の決算を発表する予定だが、すでに一連の不正問題に関連する対策費用として76億ドルを計上しており、関連の費用は今後、さらに膨らむとの見方を示している。

“傲慢さ”のツケ、制裁金は膨大な額に

VWは昨年9月、排ガス規制基準を満たしているようにみせかけるため、排気量2リットルと3リットルのディーゼルエンジン車に「不正な装置」を搭載していたことを認めた。

今回の米当局との合意によって、刑事訴追を免れる可能性があるほか、制裁金も一定程度、抑えることができるかもしれない。同社に課される制裁金は、大気浄化法に違反したとして、最大460億ドル(約5兆851億円)に上ると予想されていた。

自動車価格情報サイトのケリー・ブルー・ブック(KBB)によれば、現在の中古車価格に基づいて算出した場合、同社が対象車種を買い戻すのにかかる費用は、およそ73億ドル。一方、アナリストらによれば、制裁金と修理費用、和解金などで同社が支払う金額は最終的に、数百億ドルに達すると見込まれている。

しかし、たとえそれだけの制裁金を支払っても、VW車の所有者たちを納得させられるかどうかは分からない。具体的な修理の内容は今のところ明らかにされていないが、彼らがVW車を選んだ主な理由であるターボディーゼルエンジンの特徴、加速と燃費の良さは、その修理によって損なわれてしまうだろう。

さらに、たとえ買い戻しに応じたとしても、米国の市場と規制当局にこれほどの“傲慢さ”を見せつけた同社の顧客リストに、所有者らが再び名を連ねるとは考えづらい。
裁判所に提出した文書の中でVWは、「顧客、ディーラー、規制当局、そして米国民の信頼を取り戻すことに尽力する。今回の合意は正しい方向に向かうための重要なステップだ。すべての顧客に対して十分な補償を行い、ディーゼル車の排気ガスが環境に及ぼした影響があれば、それらを改善していく方針だ」と述べている。

編集 = 木内涼子

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