安倍政権は「女性が輝く社会」の実現を掲げているが、女性にとっての教育や仕事の必要性について、アイエンガー氏に話を聞いた。(インタビュアー:フォーブス ジャパン副編集長/WEB編集長 谷本有香)
谷本有香(以下、谷本):アイエンガー教授が「アジア女子大学支援財団」の活動に参加されるようになった動機は、どのようなものだったのでしょうか。
シーナ・アイエンガー(以下、アイエンガー):もともと教育全般に関心がありました。なかでも女性の教育支援に興味を持ったのは、今もアジアでは、高等教育を受けられない女性がたくさんいるからです。
女性が教育を受けたり、仕事を続けたりすることが重要な理由はいくつもありますが、特に重要なのは、自立した生活のためにはこの二つが欠かせないということです。仕事は男性がするもので、女性は家で家事や子育てに専念するもの、と考えていると、もしもその男性に万が一のことが起きた時に、残された女性や子どもは生活ができなくなってしまいます。
こう考えるようになったのは、私自身の生い立ちが大きく影響しています。私は伝統的なシーク教徒の両親のもとに生まれました。母はいい教育を受けてはいたけれど、父が、女性は働くべきではない、という考えを持っていました。私が盲目だったこともあり、母も自ら子育てに専念することを選び、働いていませんでした。
しかし、私が13歳の時、父は借金を残して亡くなってしまい、母が収入を得なくてはいけない状況になりました。幸い母は教育を受けていたのですぐに仕事を得られましたが、もしも教育を受けていなかったら、私の家は生活ができなくなっていたでしょう。
そのため、女性も教育を受けて働くことが本当に大切だと考えるようになりました。女性のエンパワーメントは哲学やイデオロギーではなくて、生きていく術であり、不可欠なものなのです。