アリババ・スポーツは3月、賞金総額550万ドル(約6億円)のeスポーツトーナメントを4月から開始すると発表した。トーナメントは、シンガポールの上場EC企業YuuZooと提携して実施する。YuuZooはシンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピンの東南アジア6カ国で、eスポーツイベントを実施した実績がある。
大手IT企業がこぞって参入
この新興分野に参入を目論むのはアリババだけではない。テンセント(騰訊)は同月、人気のモバイル及びデスクトップゲームで600対戦以上を主催し、プロ向け対戦に適した商品を開発する計画を発表した。中国一の富豪、ワン・ジエンリン(王健林)の息子ワン・スーツォン(王思聡)も、自身が経営するベンチャーキャピタルを通じ、同分野に5億元(約84億円)を投資した。
しかし、投資家がリターンを得る道筋は見えない。スポンサー収入と広告収入だけでは、オペレーションコストを埋めることすらできず、既存のプレイヤーも安定したビジネスモデルを確立できていない。国際的なeスポーツ大会World Cyber Arena(WCA)を運営した銀川国際は昨年、6540万元(約11億円)の損失を出した。対戦ビデオゲーム開発の英雄互娯も昨年上半期に758万元(約1億3,000万円)の赤字を計上した。
中国の大手ゲーム会社幹部は言う。「現時点ではビジネスモデルはできていない。赤字にならなければいい方で、100、200万元でも利益が出れば上出来だ」
アリババ・スポーツCEOのジャン・ダージョン(張大鍾)は、「トーナメントからすぐに儲けが出るとは考えていない。関連するEC製品やサービスから売り上げを得たい」と語り、今後3~5年で100億元の売上高が期待できるとの見通しを示した。
テンセントの幹部は、「eスポーツのトーナメントは、ゲームのいいプロモーションになる」と語り、損失は問題としていないようだ。