全米トップVC創業者が語る「リーダーが持つべき勇気」

ベン・ホロウィッツ / Photo by Travis P Ball/Getty Images for SXSW


経営者は広範な領域に目を向け、細部まで気を配らねばならない。5分費やした決断なら、その倍の10分費やしてみるのもいい。その少しの時間を思考に当てるだけで、途方もない悲しみに苛まれることを回避できるかもしれないのだから。

起業家の大きな修羅場といえば、現金の枯渇が間近に迫った局面だろう。50人以上の投資家に話を持ち込んだにもかかわらず、それら全員に断られるかもしれない。ただ全てを失敗しようと、51人目の投資家の心を掴めばいいことである。生き残るに必要なのは、たった一人からの信頼だ。自分を信じてくれる投資家が一人でもいれば十分なのだ。

起業家が奮闘しようと、申し出を断られることの方が多いだろう。だからこそ、物事が悪い方向に進もうとも目標を見失わずに挑戦を続けていかなければならない。それができるかどうかが分かれ道となる。不幸はずっと続くものではない。もし十分な距離を走り続けられれば、ゆくゆくは幸運を掴めるものだ。

良い意思決定をしていても、起業家はハード・シングスに遭遇するものである。そこで最も重要となるのが、苦難を乗り切ろうとする勇気だ。難しく感じるだろうが、この素質は誰もが身につけられる。

元プロボクサーのマイク・タイソンが師事したトレーナー、カス・ダマトは「英雄と臆病者は、恐怖心にどう対処するかで変わってくる。英雄も、皆と同じように恐れを抱く。だが、臆病者は逃げても英雄は逃げない。最後までやり遂げるかどうかで、人は英雄にも臆病者にもなれる」と話している。

起業家が困難に直面し、心の中では恐れを抱いていても、正面から向き合い続けていれば度胸が身につく。その勇気を忘れずに、経営していくことが大切だ。

ベン・ホロウィッツ◎大手VCアンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者兼ゼネラルパートナー。投資先には、フェイスブック、ツイッター、エア・ビー・アンド・ビーなどがある。それ以前はネットスケープなどを経て、オプスウェア(元ラウドクラウド)の共同創業者兼CEOとして、2007年に同社を16億ドルでヒューレット・パッカードに売却した。

文=土橋克寿

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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